遠隔診療の広がりは?

新型コロナウイルス肺炎によるパンデミックで、本当に中国・日本だけでなく、欧米にこれほど広範囲に、しかもこれ程急速に広がりをみせていくとは、ちょっと予想できなかった。

 

こういった感染拡大を防いでいくために、世界中で不要不急の外出自粛が叫ばれている。

このため、企業等のミーティングもテレビ会議等のオンラインで行われることの抵抗、閾値は急速に下がってきていると思われる。実際に、これを機に初めて使用してみたという方も多いのかもしれない。

 

私は、たまたまIBM時代に、社内でZoomが使えるようになり、その頃からちょこちょことミーティングで使うことがあった。

ただし、未だにホスト役は他の人にお願いして、自分はホスト役になったことはないのだが…。

その程度の、ビギナーレベルである。

 

ただ、この様なツールがなければ、ミーティングを含めた様々な業務を延期せざるを得なくなる。中には、強行してみんなで集まってミーティングを行うということも起こってしまうかもしれない。

そういった意味で、こういったオンライン・ミーティングができるツールは、こういった世界情勢の中では、本当に「渡りに船」である。

 

そして、本当は医療における診療でも、このオンラインによる「遠隔診療」は非常に有用であると思われる。特に病状の安定している患者さんが、毎月採血や聴診などを行う必要がない場合は、「遠隔診療」で十分なタイミングも少なからずある。

例えば、降圧薬や高脂血症治療薬だけの服用をしているような患者さんの場合、毎月通院していたとしても、薬だけもらいに行く「月」も頻回にある。そういった場合にWebを活用した「遠隔診療」で十分問題ない場合も、実際には多々あると考えられる。

さらに、高齢者の場合、家族が薬を取りに来られる場合も、以前から少なからず認められる。それであれば、むしろ「遠隔診療」で、Web上の画面であっても、高齢者の患者さん本人と会話できる方が良い場合もある。高齢であればあるほど、患者さんも顔なじみのドクターの顔が画面から見られれば、患者さんもその方が安心するのではないだろうか。

 

診療報酬的にも、実際の対面の診察とほとんど診療報酬点数は変わらなくなってきている。あとは、ドクター・医療者側の「食わず嫌い」を無くしていくことが重要ではないか。

 

開業医の先生方からすると、正直なところ、患者を他医療機関に取られてしまうと考えられている先生も多いと感じる。しかし、このように自前の患者さんに対応していくだけでも、充分に有効活用できると思う。

 

そして、実は「遠隔診療」であるからこそ、都心の患者さんを地方の開業医の先生方が診察するということも可能になる。

 

もちろん、IT活用ならではのセキュリティ対策は必要である。

実は、IBM社はとにかくこのITセキュリティ対策が極めて厳重であった。そのIBMがZoomを導入した時には、ちょっと驚いた。Zoomはそれくらいセキュリティ的に安全なものなのではないかと思う。ただ、簡単に録画できたりするので、遠隔診療中の動画を患者さんが無断で録画してしまうこともあるかもしれない。今後、そういった対策についても予め、検討していく必要はありそうだ。

 

しかし、こういった外出すること自体が感染リスクになっている状況など、世の中の状況は劇的に変化していっている。そういった時にこそ、新しく使えるツールについても上手に活用していかなければ、患者さんのために、より最善を尽くしていく上で必要ではないだろうか。そして、そういったことを何となく拒み続けていくことが、結果的に自医療機関だけが周りから取り残されてしまう。そういった厳しい時代に、日本の医療が変わりつつある状況ではないかとひしひしと感じる。