「妊婦の糖代謝異常 診療・管理マニュアル 第3版」を読んで

「妊婦の糖代謝異常 診療・管理マニュアル 第3版」(日本糖尿病・妊娠学会 編集:メジカルビュー社2022)を読んだ。

 

2015年に初版が出て、今年第3版となった。2009年ごろから、妊娠糖尿病の血糖管理の重要性が叫ばれ、この本が出版され、非常に便利になった。その理由として、2008年にHAPO studyという非常に意義深い臨床研究がNEJMから発表になって以降、飛躍的に「妊娠糖尿病」についての診断・診療が進んだと感じる。

 

そして、日本人は、生活習慣病とは無縁なやせ型の体型の女性であっても、妊娠糖尿病の診断基準を満たす方も多い。そうした人たちに、どの様に理解し、出産までどの様に対応していけばよいのか、大変参考になる教科書的な本であると思う。

 

実際に、突然「あなたは妊娠糖尿病です。今日からインスリン注射を開始して下さい」と言われても、本当に途方に暮れてしまうかもしれない。しかしながら、こういった医学的なエビデンスがあり、どういう目的で、どのように出産まで対応していけばよいのかをきちんと理解していれば、妊娠中も過剰な不安を感じることなく、安心して出産に臨めると思う。

 

インスリン治療を行っている妊婦さんは意外に多く、これによって無事に元気に生まれてくる赤ちゃんもたくさんいる。こういった根拠がどのようなものかも含め、基礎的な研究内容から疫学についてまで幅広く網羅されている。

このため、是非、こういった本を企業や健保の保健師さん達も手に取ってもらい、正しく理解したうえで、働く女性たちのために、こういった正しい知識を広めていってほしい。そして、こうした妊娠中の医学的エビデンスについては、働く女性活用の議論の中にも、もっと積極的に含めていただいて、もっと多くの働く人達に知ってもらえればとも思う。