「最高収益を生み出す病医院マーケティング」を読んで

「小倉記念病院のV字回復に学ぶ 最高収益を生み出す病医院マーケティング」(一般社団法人病院マーケティングサミットJAPAN 編集:日経BPマーケティング2021)を読んだ。

 

これも「医師の働き方改革」に関わっているからには、多少なりとも関連する本を読まなければと思い購入した本だったのだが、かなりの衝撃を受けた。

 

小倉記念病院と言えば、僕でも知っている循環器で有名な福岡にある病院だが、そもそも一時期崩壊しそうな状態に陥っていたことさえ知らなかった。

この本の内容としては、名医と知られた先生が退職された後に、医師を含め退職者が続出し、そこから本のタイトル通り「V字回復」していく中で、どんなことを考え、実際に実行していったかが記されている。しかもその時に、マーケティングの手法を積極的に用いたということ自体が、そもそもかなりインパクトがある。

そして、その内容が医療業界の中においてはあまりにも斬新で、驚きの連続であった。「医療機関でそこまでやっていいの?」と思ってしまうことも、大胆に取り入れて、地域での存在感を強めていった。

 

その特徴的な取り組みが、病院広報誌の表紙である。一般的には病院の外観の写真や、院内の医療スタッフの顔写真などが使われていると思うが、それを地域の人達の普段の仕事風景や手術室の緊張感ある術中写真等を積極的に使用していることである。これは今までの病院広報誌ではなかった発想ではないだろうか。

しかし、地域に根差した医療を思うのであれば、確かにこういった取り組みこそ大切であって、何年も何年も同じような院内紹介だけしていては、飽きられてしまう。

 

こういった取り組みを考えた時に、一番厄介なのは医師達を説得することである。何を言われるか分からないし、頭ごなしに怒られることもあるであろう。そのため、事務方としては結局、チャレンジすることは避け、無難な今まで通りの広報誌を作ってしまう。

しかし、この病院では、医者に怒られながらも、その大切さを粘り強く説明し、実際に実行に移している。そういった熱い思いが、これからの医療機関運営には大切なのだということも大変参考になる。

 

今までのプライドや見栄みたいなものは横に置いておいて、本当に大切なものは何であるかを常に考え続けているからこそ、こういった思い切った変革を起こすことができるのだと思う。

やはり、ここでも前向きな変化を進んで行っている病院が、今の時代のニーズを捉え、勝ち残っていく姿が示されていた。日本中の病院が、こういった成功事例をたくさん知って、自分達に合った新しい取り組みを始めてもらえればと思う。