「職場のウェルビーイングを高める」を読んで

「職場のウェルビーイングを高める 1億人のデータが導く「しなやかなチーム」の共通項」(ジム・クリフトン、ジム・ハーター 著、古屋 博子 訳:日本経済新聞出版2022)を読んだ。

 

この本は、アメリカの世論調査及びコンサルティングを行っている企業である、あのGallap社の研究者達が何十年にも渡って、世界中の職場で働く1億人以上の従業員の意見や行動を基に、Well-Beingの調査を続けてきたものをまとめられたものである。

このGallap社のWell-Being要素と実践法の特徴は、訳者があとがきでも書かれているように、まず徹底的に、しかも様々な科学に基づいていること。そして、そうしたデータを分析し、シンプルな要素や洞察に落とし込んでいることにある。

 

5つ職場のWell-Beingを高める要素が挙げられており、その中でも最も重要で、かつ他の4つの要素の基盤となるのが「キャリア・ウェルビーイング」であるとのこと。

その「キャリア・ウェルビーイング」が高い人は、生活全体が生き生きしている可能性が2倍以上。そして、職場で「キャリア・ウェルビーイング」を高めるためには、以下のアクションを起こすことが大切だと書かれている。

・必ず組織の全員が自分の強みを知っているようにする

・従業員の心身に悪影響を及ぼすマネジャーを排除する

・マネジャーをスキルアップして、ボスからコーチに変貌させる

・ウェルビーイングをキャリア開発の会話の一部として定着させる

 

そして、生き生きした組織文化の築き方として、

・ウェルビーイングに取り組む際にCEOから始めることが最も効果的だということを肝に銘じる

・パフォーマンス・マネジメント(業績評価)の一環にウェルビーイングを入れるようにマネジャーに備えさせる

・ウェルビーイングコーチ達とネットワークを築き、成功例や効果的な手法を共有する

・実務と方針を監査する

この他にも、エンゲージメントが高いことが大切なことも述べられており、促進要因として、コミュニケーションや承認等も挙げられている

 

まだまだ他にも、エビデンスに基づいたキーワードが数多く提示されている。そして、付録としてこれまでの研究について約80ページにも渡って様々な結果が示されている。医師の中には、科学的な根拠が無いから、ウェルビーイングやパフォーマンス等の話しは聞く気がしないという人も多い。しかし、いよいよ「医師の働き方改革」まで1年を切って、どんなリーダーシップを発揮するかが、職場の離職率に直接的に影響するようになった時代に、こういったエビデンスも示してくれる本を読んで、実践していくことが必須であるなと感じてもらえればと思う。そして、こういった課題は万国共通であり、日本においても今後、もっと数多くの科学的データがこういった分野で示されることを期待したい。