「1兆ドルコーチ」を読んで

「「1兆ドルコーチ(シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え)」(Eric Schmidt, Jonathan Rosenberg, Alan Eagle著、櫻井祐子 訳:ダイヤモンド社;2019)を読んだ。

 

タイトルの金額が、我々からすると非現実的な数字であるが、本文に出てくるスケールも、ちょっと庶民にはかけ離れた感じが最初から続いていくので、かなり面喰ってしまう。

しかも、この著者3人ともに、GoogleのCEOなど長く活躍した経営陣たちで、本文に出てくるのも本当に多くの現代のアメリカで活躍を遂げた面々が数多く紹介されている。

 

ただ一方で、それだけの世界を席巻する経営者達にコーチをし続けたビル・キャンベルだからこその、極めて説得力のある言葉も、数多く紹介されている。

 

そもそも、こういったアメリカ経済を代表する経営者達から、依頼を受ければだれでもコーチを行ったわけではない、というところから凄いと思う。

本文にも、「コーチャブルな資質とは、正直さと謙虚さ、諦めずに努力を厭わない姿勢、つねに学ぼうとする意欲である。」このため、「利口ぶるやつにはコーチできない」とぴしゃと言った。

「謙虚さが重要な理由は、リーダーシップとは会社やチームという、自分よりも大きいものに献身することだと、ビルは考えていた」。最近では、「サーバント(奉仕型)リーダーシップ」と言われたりもしている。こうした姿勢が高い企業業績に直接結びつくという研究成果があるとのこと。

Personnel Psychology65(3)565-96

 

また、「チーム・ファースト」で考えているか? ビルが最も嫌ったのは、学ぶことを止めた人達とのこと。「質問するより答えるほうが多い?そいつは赤信号だ!」とある。

しかしながら実際には、経営層でも、学ぶことを怠っている人は多いかもしれない。

 

さらには、「チーム構成に細心の注意を払い、多様な才能が巧みに折り合わされたチームをつくれ」、「パフォーマンスの高いチームを築いて未来の基盤づくりをするには、経験だけでなく潜在能力をもとに採用することが欠かせない」などといった、本当に難しいことをシンプルに、しかもチームとして、未来に向かって考えていくことを、数多くの経営者達に常日頃から伝えていたとのこと。

 

「どんな企業も成功するためには、チームコーチングを組織文化に組み入れなくてはならない。特に必要なのが経営層である。経営チームがその能力を十全に発揮するには、コーチが必要だ。」

日本のあらゆる企業でも、行政でも、そして医療機関においても、全く同じことが言えるのではないだろうか。

 

是非、必読の一冊だと思う。