これからの人事の役割り

今月のさんぽ会は「人事の私の困りごと」というタイトルで、二人の人事担当者のお話しを聞くことができた。二人とも大企業の人事から子会社への出向を経験されているので、大企業の観点からも、中小企業の観点からも、これからの人事部の役割りについてお話しをされていたので、大変勉強になった。

 

まずは、SCSKから、その子会社である株式会社CSIソリューションズで人事担当をされている海野賀央さんの話しであった。海野さんからは、人事の役割について総論的に解説もしていただいた。そして、人事と言っても幅広い分野の仕事があるということを分かりやすくサマライズしていただいた。

その中で、人事が考える「人事部に求められている機能」として、『MBAの人材戦略』で著名なミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授が提唱した以下4つの分類(Human Resource Champions: The Next Agenda for Adding Value and Delivering Results, 1997, David Ulrich)をご紹介いただいた。

このフレームは、人事が経営や従業員に提供する価値をもとに構築されたものとのこと。

https://www.recruit-ms.co.jp/issue/feature/0000000152/1/

1. 戦略パートナー(Strategic Partner)

2. 管理のエキスパート(Administrative Expert)

3. 従業員のチャンピオン(Employee Champion)

4. 変革のエージェント(Change Agent)

従来の「人や組織に関する取りまとめを行い、法的リスクを最小限化し、業務の効率性を高めること」はもちろんのこと、戦略的人的資源管理(SHRM; Strategic Human Resource Management)という言葉に代表されるように、企業の将来を見据えた戦略実現のサポーターとしての役割も、最近では人事の役割として求められてきている。

そういった意味で、より幅広く「経営の真の戦略実現パートナー」になるべく、社内外の様々な職種な人とコミュニケーションを取っていくことを、今まで以上に「人事部」は強く求められてきている。そうすることで「人と戦略とのかけ橋になる」ことができるのではないだろうか?

 

また、株式会社アキタフーズ人事部の齊藤和毅さんからは、より具体的に人事の仕事についてご紹介いただいた。齊藤さんは、スーパーのダイエーに入社され、長年、ダイエー・イオングループ内で人事担当をされてきた。入社当時は、まだ業界ナンバーワンの大企業。その後ご存知のように急激な業績悪化に直面し、実際にリストラ断行といった重い任務の仕事も少なからず経験されてきたエピソードも、沈痛な面持ちでお話しいただいた。

我々医療職は普段、実際のリストラにおける様々な人間模様を直接聞く機会はなかなかないため、場内シンと静まりかえって、参加者全員が真剣にその話に聞き入っていた。

その中で、非常に印象的だったのは、ダイエーが産業再生機構の管理下に置かれている時に、林文子会長(現横浜市長)が何度も「ESなくしてCSなし」と言っておられたというエピソードを紹介されていた。ESとは(Employee Satisfaction:従業員満足度)の略で、CSとは(Customer Satisfaction:顧客満足度)のこと。

これは、従業員が万全の健康状態でモチベーション高く仕事に取り組むことで業務の質が上がり、それに伴ってより良いサービスを顧客に届けることができるということだそうだ。

令和の時代は、よく「人材に投資する時代」と言われる。そういった意味で、人事部と産業医療職とが日頃からしっかり連携を取り合って、経営層とともに「真の働き方改革」を推し進めていくことが、企業の発展のためには、規模の大小を問わず、非常に大切な要素になるのではないかと、今回のセミナーを通して改めて感じた。