スターバックス関連の本を3冊読んで

世の中に、スターバックスに関する本は数多とあると思うが、今回、「スターバックスはなぜ、値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(John Moore著、花塚恵 訳:Discover21;2014)、「感動経験でお客様の心をギュッとつかむ!スターバックスの教え」(目黒勝道 著:朝日新聞出版;2014)、「スターバックス流 最高の育て方」(毛利英昭 著:総合法令出版;2019)、の3冊読んでみた。正直、どれを選べばよいものなのか判別が自分にはよくできなかったので、とりあえず手当たり次第に選んで買ったのがこれらの本であった。

なぜ、スタバの本だったかと言うと、残念ながら先月限りでスターバックスのある店舗での産業医業務が終了した。産業医開始後、スタバのことについて知りたいなと思い、結果3冊読んだのだが、改めて感じたことをまとめてみたいと思う。

 

いずれの本も内容は似通っているところが多い。やはり、スターバックスの特徴は、ミッションステートメントとして、理念や価値観を最上位に掲げ、次に経営戦略や組織目標を定め、それを実現するための短期的な目標やアクションプランへと展開するといった、体系的な組織全体のマネジメントを行っていくという、方針が非常に明確になっているとことであろう。BHAG(Big Hairy Audacious Goals)「心に活力と栄養を与えるブランドとして、世界で最も知られる、尊敬される、朽ち果てることの無い偉大な企業になること」というミッションステートメントの概念を、パートナーと呼ばれている社員一人一人がしっかりと認識し、意識できるように常日頃から教育・研修を行っている。

 

そして、理想的なコミュニケーションを求めて、パートナーが身につけるべき3つのスキルを「スタースキル」と呼んで分かりやすく明示している。

➀自信を保ち、さらに高めていく

②相手の話しを真剣に聞き、理解する努力を怠らない

③困った時は助けを求める

一見、平凡なように思えるが、やはりよく考えが練られていると思う。

まず、➀とは、仕事に対しての誇りを示している。そして、コーヒーを通して、お客様に驚きや感動、安らぎなどの価値を提供している自負を持ち、仕事に励もうという思いが込められている。

そして、②は、まさしくコーチングの傾聴や承認といった要素が含まれている。上意下達の意思伝達ではなく、相手を尊重しながら、相手の立場に立って考えるという、ホスピタリティを大切にすることに繋がっていくと考えられる。

③は、「仕事は見て覚えろ」的な上下・師弟関係ではなく、助けを求めることを歓迎し、逆に助けを求められたら、逃げずに手を差し伸べる。そういったお互い積極的に助け合える環境づくりを進めていく。

これら3つを見ただけでも、まさに令和の時代に必要な職場環境ではないかと思える。

 

経営資源としても、最も重要なのは人的資源であるという考え方がしっかりと浸透しているのも特徴だ。

そもそも、モノを売っているというよりは、先程のお客様に価値を提供するという、人に対する考え方が社内にも行き届いている。

このため、従業員を消耗品のように扱うのではなく、誰もが働きたいと思うような就業環境を作ることで、優秀な人材を集めミッションステートメントに基づく理念や価値観を実現しようとしている。

 

スターバックスには、マニュアルはあまり存在せず、一人一人が、顧客が満足するような体験を店内でできるような気持ちを常に心がけてコミュニケーションを取るようにしている。それを当たり前のこととしてできるようにと心がけている意識の高さが、やはりスターバックスの強さであり、他社や医療関係者も、そういった考え方は、会社運営・病院運営上、非常に参考になるのであろう。

 

僕自身も、安全衛生委員会に出席するたびに、その季節に合ったコーヒーを出していただき、なぜ今日このコーヒーを選んだのか等、本当に毎回親切に教えていただいた。今まであまりコーヒーを飲んでいなかったのだが、最近はかなり意識してきちんとコーヒーを飲むようになった。

コロナ禍の影響で、スターバックスにおいても様々な影響が他の飲食店同様出ているが、それでも常に明るく、「人、人、人の経営」は全く揺るぎがない。「マニュアルだけで感動を提供することはできない」とは、まさにその通りだと思うし、来年以降、コロナが過ぎれば間違いなく以前の通りにお客さんはお店を訪れるであろう。是非、これからもこういった理念が変わることなく、人を大切にし続ける企業であり続けてほしい。