メンタルヘルス不調者への法務的な観点からの対応

先週、「メンタルヘルス法務主任者・産業保健法務主任者資格講座」という勉強会があり、参加してきた。

これは、今後計6回にわたり開催される。

その名の通り、産業医を含め産業保健スタッフが、メンタルヘルス関連を中心に、産業保健関連の法律について勉強していくことになる。

 

この勉強会の中心的な役割をされているのが、近畿大学法学部教授の三柴丈典先生である。今回は、三柴先生自ら、メンタル不調で勤怠不良の社員への対応や、発達障害が疑われる社員への対応など、日頃常に対応が難しいことが多い事例に対して、どの様に考え、どの様に配慮していくべきかなど、今までの裁判での判例なども事例として紹介していただきながら、ご講義していただいた。

 

こういった悩ましい事例に対し、産業保健医療スタッフとしては、やはり理論的にきちんと頭の中で整理できた状態で、社員や会社に向き合う必要がある。そのためには、本人への就労支援や健康配慮など、「救済」の側面が当然必要となる。一方で会社も慈善団体ではないので、労働力として、ある一定のレベルに達しない場合は「けじめ」としてやむを得ず人事的措置を講じなければならない。

これを適正に切り分けると言ったことが非常に難しい。「けじめ」が一方的過ぎれば、ハラスメントになる。一方で「けじめ」が緩やか過ぎれば、他の社員の士気が大きく下がる可能性がある。

 

このため、今までの裁判判例を提示していただきながら、現在の日本における「休職命令」の法的要件についてや、本人へどの程度の説明が必要であるかなど、具体的に誰もが納得するような落としどころを見つけるためには、どの様に対処していけばよいのかを教えていただいた。

 

昭和の時代は「上意下達」であったが、令和の時代は本当にしっかり気持ちを込めてコミュニケーションをとることが大切で、必要に応じて、職種・職位の変更や、ジョブ・コーチの選任など、できる限りの配慮を会社側も行う必要性が求められている。

 

そして、その様な背景を鑑みると、社内で様々な事例に対応できるようにするためには、「就業規則」や「健康管理規定」などをきちんと定めていくことが大変重要であることもよく分かった。

 

そのためには、今後はどんな会社においても、社内の様々な事例を直接弁護士に相談する必要性も高まっていくかもしれないし、産業医や社労士も、今まで以上に求められてくる水準が高まってきており、よりこういった法律・法務関連の勉強が必要となっていると感じた。