将来人口推計と産業保健への影響

名古屋での産業衛生学会に参加中、「我が国の将来人口推計と産業保健への影響」という教育講演があったので、聴きに行ってみた。

演者は国立社会保障・人口問題研究所の別府志海先生。国の公式な将来人口推計は、この研究所が行っているそうだ。

 

人口推計とは、過去から現在に至る傾向・趨勢を将来に投影し、科学的に一定の過程を設定しながら推計していくものらしい。あくまでも予言・予測を第一目的とするものではないそうだ。

 

ご存じの通り、日本ではいよいよ2015年の1億2709万人をピークに人口が減少してきているわけだが、別府先生が強調されていたことは、今までも「人口減少」を認めた時期は、歴史上何度もあるが、それは感染症や戦争で「死亡率が上昇」したことが原因であった。しかし今起こっている「人口減少」は「出生率低下」が大きな要因となっているとのこと。このため、子供の数が増えない限りは人口が増加していかないこととなる。

 

近年、女性の労働力率上昇が認められるようにもなってきたが、実はこの要因として、未婚化という要素も影響しており、有配偶者の女性の労働力率はまだ低いとのこと。

さらに日本の中で、0~14歳の人口ピークは1954年、15~64歳は1995年だった。一方で、65歳以上は2042年まで増え続け、さらに75歳以上は2054年まで増え続けるとのこと。

平均寿命については、2065年に男性84.95歳、女性91.35歳、その年の総人口は8808万人と推計されている。

 

これらのデータを見ると、我々の世代は本当に90~100歳まで生きる人も非常に多くなり、このため、超々高齢化社会の中でどうやって生き続けていけば良いか、だいぶ先の老後まで我々の世代一人一人がかなり真剣に考えざるを得ないのではないかと、強く感じた。

 

 

講演後に厚かましくも、名刺交換や直接質問もさせていただいた。労働者人口が増えなくなっている日本の中で、この大変貴重な働く世代にとって、糖尿病という生活習慣病は、この国を代表する統計学者から見ても、労働力率を低下させかねない負の影響力を持つ憂慮すべき疾病で、強く懸念しているとのこと。

そういった意味でも、「生活習慣病対策は、日本の労働力を維持するためにも非常に大切です」と仰っていた。そして、私の取り組みについても、是非今後も頑張ってほしいと言っていただき、私自身、俄然気合いが入った思いである。