日本における疾患の性質変化と医療の在り方

日本の医療も大きく変化しようとしている。ただ、どの様に変わっていけばよいのか。その大きなヒントになるような考え方を、経済産業省の江崎禎英氏のご講演で多少なりとも得ることができたと思う。

タイトルは「健康・医療情報の活用 ~疾患の性質変化と医療の在り方~」。江崎氏の肩書きは、経産省商務・サービスグループ政策統括調整官、兼 内閣官房健康・医療戦略室次長、兼 厚生労働省医政局統括調査官と、正しくスーパー官僚の名が相応しい活躍をされている。

そして、お話しも非常にインパクトのあり、かつ、将来の日本を如何にしていけばよいのか、方向性を示してくれるようなお話しであった。

 

ご存知の通り、日本は少子高齢化社会の極みのような状態になっているが、実際には高齢化率が28%を上回り、「超超高齢社会」と表現することが正しいそうだ。しかし、これは日本の医療レベルが高く、平均寿命が延びていることから、ある意味必然であるとの考え方を示された。そのため、むしろこのことを歓迎し、「健康長寿社会」を達成するために、還暦以降の人達が「自立した生活の確立」「存在意義を感じられる」生活を送るために、「与えられた時間を如何に楽しく、健康に⽣きるか」が大切ではないかと話されていた。

そして、今後は60歳代だけでなく、70歳代・80歳代であっても、元気であれば緩やかに働き続けてもらい、50歳代までの若い世代がより活躍していってもらえるように「ハイブリッド型の社会」を構築していくことが重要と仰っていた。

 

そして、「公的医療保険」「公的介護保険」は、もうすでに高額になり過ぎて、医療機関や介護施設が売り上げを伸ばすということが困難な環境になってきた。一方で、公的保険を支える公的保険外サービスの産業群である「ヘルスケア産業」は2016年の段階ですでに25兆円規模まで拡大してきており、しかも試算によると2025年には33兆円規模まで膨れ上がっていくと予測されている。

そういった意味でも、医療機関で「治療」を行っていた医療者は、ドクターを含めて必然的にどんどん、国民の健康保持・増進のために、この「ヘルスケア産業」分野で活躍していくことが求められるともお話しされていた。

 

このため、「企業内に産業医が必須であるのと同様に、保険組合にも顧問医が必須になるような組織体制を築いていただきたい」と私から質問をさせていただいた。すると「そうなっていくことは必然な状況に、日本はなっていくのではないでしょうか」とお答えされていた。このように直接勇気づけていただけて、大変嬉しく感じた。

私自身は現状、まだまだこの「ヘルスケア産業」分野では異端児であるが、そう遠くない未来には、この分野で働く糖尿病専門医もかなり多くなるのではないかと感じた。そういった意味においても、私自身が様々な方々とコラボレーションさせていただきながら、「ヘルスケア産業」分野の成功事例を積み上げて、発表・アピールしていけたらと思う。そして、この日本のハイブリッド型社会が、日本のこれからの社会を好循環させていければよいなと、心から思う。