1流は10%未満、2流は20%未満、3流は…

僕自身、「医師の働き方改革」のサポートを行っていることにより、様々な病院の成功事例を耳にすることも増えてきている。そして、そうした病院が積極的に「医師の働き方改革」を取り組むことによって引き出されている素晴らしい成果の一つが「医療スタッフの離職者数減少」である。

 

この内容は、僕も様々な講演で話しをさせていただいているのだが、本当にこういった病院においてリアルな看護師さんの離職率を尋ねると、軒並み返ってくる答えが「このコロナ禍においても、年間の離職率が1桁」という事実である。

 

一般的に、看護師の年間離職率は10%台前半と言われている。このため、10%未満というと、やはり離職者がかなり少ないことが伺われる。

しかしながら一方で、大学病院の看護師と話していると、新卒3年目までに3割くらいの看護師が離職してしまっているといった話も聞く。確かに、大学病院は高度先進医療なので、かなり特殊であることもあり、一般診療を希望する看護師にとっては、ある程度雰囲気や内容が分かれば、一般病院への転職なども考えるのかもしれない。

また、このコロナ禍において、実際にコロナ病棟の最前線で働いていた医療スタッフの負担度合いはかなり高いものであったであろうことが想像される。特に幼稚園問題など、医療者に対するバッシングも大きな精神的な負担になり、これに伴って退職を余儀なくされた医療スタッフもおられたことは、皆さんもよくご存知の通りである。

 

ただ、先程の離職率1桁となっている病院の中には、この3年間、ずっとコロナ病棟でコロナ患者も多数入院し、診療していた病院も含まれているのだ。実際には地域の拠点病院である総合病院もあれば、後方支援の小規模な病院もある。地域もバラバラ。要は、どんな業態の医療機関であっても、積極的にコミュニケーションを取り合う、多職種連携が活発で心理的安全性が高い組織づくりを行っている病院が、地域性も関係なく上手くいっているのである。

 

確かに平成の時代は、変わらなくても何とかなった時代であったが、しかし令和の時代は、「変わらないことが最もリスクが高い時代」になっているということではないであろうか。それは医療業界においても同じことが言えると思われる。

厳しいようだが、それを最もよく表れてくる指標が、この看護師の年間離職率という数字なのではないだろうか。そして、分かりやすく表題とした「1流は10%未満、2流は20%未満、3流は30%未満、…」といったランク分けさえもできる状況になってきていることも否めない。実は、多くの積極的に「医師の働き方改革」を推し進めている病院も、かつては離職率が高かったと話されている病院が極めて多い。

 

もしそうであるのならば、是非とも多くの病院に、前向きな意味での「医師の働き方改革」を積極的に進めていって、これからの時代に合った病院経営を行っていくように、変化することを恐れず、令和の時代のニーズを捉えて、これからも地域の医療をしっかりと支えていってもらえればと思う。そうする取り組みを地道に行っていくことによって、結果的に自分達の病院から去っていこうと考える医療スタッフもどんどん少なり、活気ある医療レベルの高い病院をこれからもずっと維持することができるのではないだろうか。