12月 2019

前回の続きです…。

 

実際に、彼が予備校に通っていた頃、僕もポリクリが始まり、医師国家試験も近づいていたため、そんなに会える機会は多くなかった。

 

ただ、時々京都に帰省した際には必ず会って、どんな状況なのか話し聞いたりしていた。

微分積分なども、この大学卒業後からはじめて勉強しだしたわけだが、元々の地頭がよいようで、高校生やまだ10代の浪人生に負けない吸収力で、どんどん成績も伸びていった。

それでも、僕自身3浪して医学部に入ったので、小嶋にも「3年かかるぞ」と、焦らせないように話しをしていた。

 

しかし、結局彼は2年で見事医学部に合格。しかも医学部2年生からの編入ということで、予定していた医者になるまで9年計画だったのを、7年で達成することになる。本当に凄いことだと思った。

 

京都時代のエピソードとして、未だに二人であった時に話題が出る出来事があった。当時、やはり極力お金をかけずにいたいと思っていたようで、僕が帰省して連絡を取った時に、手持ちのお金が120円くらいと言っていた。そこで、じゃあ急いで僕の実家まで来たらと言ったら、喜んですぐに行くとのこと。

このため、母親に「今から何か食べさせるために、お茶漬けでも何でもいいから、飯を作ってくれ」と頼んだ。特に何も取留めもない食事だったと思うが、美味しそうに食べてくれていたので、家に呼んでよかったなと思ったことを、今でもよく覚えている。

そして、彼の下宿からだと5㎞程の距離だったため、彼は自転車で来たのだが、夏の暑い時期で、途中暑くてコーラを飲んだら、手持ちが十円しか残っていないと言っていた(笑)。

 

彼が医学部に合格したのと、僕が医師になったのが、結果的に同じ年になった。医者になった途端に、研修医として、怒涛の忙しさで仕事をしていた。僕がやっと医者として一息付けた頃に、今後は小嶋が研修医として、怒涛の忙しさになったため、その後も年1~2回しか会えなかったと思う。しかも、彼は北海道・室蘭で研修をし、その後も千葉の南房総や三重県、そして最近までは種子島と、様々な土地で、整形外科医・家庭医として仕事をしてきた。

 

今回の南極観測隊参加については、ちょうど名古屋出張の時に三重県から名古屋まで出てきてもらった時に、実は狙っているんだと話しをしてくれた。

2年がかりで念願の観測隊参加に漕ぎ着けたようだが、さすがにしばらく会えないことになり、しかも約1年半、妻子を置いていくということだったので、久しぶりにお互い家族同士で先月、上野で集まることとした。

南極観測隊の拠点が東京・立川の辺りにあるらしく、そこでの出発直前の色々な準備についてなど、知らないことを面白おかしく教えてくれた。

 

また、「しらせ」からのメールまで、話しが辿り着かなかった。この続きは次回、年越しとさせていただきたい。

しかも、最新情報として、今日、昭和基地に到着したとメールでの連絡があった。

とうとう南極に上陸したらしい‼

 

非常に中途半端な終わり方で申し訳ありませんが、本年も大変お世話になり、誠に感謝申し上げます。

「それでは皆様、よいお年を‼」

「南極観測船しらせ」は、皆さんもご存じだと思う。そして、南極観測隊と言えば「南極物語」の樺太犬タロ・ジロを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。

 

第61次南極観測隊が、先月、南極に向けて出発し、いよいよ南極大陸に到着するところとのこと。このメンバーの中に、僕の大学時代の同級生の小嶋秀治君が、医師として帯同している。

順天堂大学は、大学1年生は医学部と体育学部(スポーツ健康学部)全員が、啓心寮という全寮制に入寮する。その時の隣の部屋員で、その頃からの仲だ。ただ、その当時、僕は医学部1年生、彼はスポーツ健康学部1年生だった。

啓心寮は8人1部屋になっていて、2段ベッドが4つあり、シャワー・トイレ・冷蔵庫・キッチン・電話が8人で共用だった。当時は、携帯電話もポケベルもまだ全然無い時代だったので、お互い、プライベートなことなどは守られるような環境には全くなかった。このため、みんなが良くも悪くもお互いのプライベートや性格はよく知ったもの同士だった。

 

その中で、小嶋(昔から「こじま」と呼び捨てにしている)は、スポーツトレーナーを目指そうとしていた。ただ、だんだん勉強するに従って、スポーツトレーナーよりも実際に整形外科医として活動した方がよいのではないかと考えはじめ、いつからか僕に「医者になりたい」と相談するようになっていた。ただ、もちろん当時の彼は医学部向けの勉強はまったくして来なかったので、数学や理科の教科について、高校時代に全く履修してこなかった範囲もたくさんあった。

僕自身、高校卒業時の偏差値が40前後で、その後に地獄のような浪人生活を3年過ごしていた。啓心寮で生活しているうちに、そういった話しもする機会はちょこちょこあったので、僕に相談してきたのだと思う。

 

その時、僕は彼に「とにかく、大学を卒業しろ」とアドバイスした。卒業した時でも、やはり「医師になりたい」という思いが変わらないのであれば、僕が高校卒業後に通っていた京都・上賀茂神社近くにある小さな予備校を紹介してあげるからと、話しをしていた。

 

すると彼は、大学4年生の時に、僕のところに訪ねて来て、「やはり医師になりたい」と話しをした。その時の覚悟を決めた表情に、本気だなという気持ちを察した。このため、僕がお世話になった予備校の先生に連絡を取り、彼の予備校生活が始まった。

 

昔の思い出話しを書いていたら、南極のところまで話しが全然行かなくなってしまった。この続きは、次回としたい。

ちなみに、下記のURLを見てもらうと、現在、小嶋先生も含めて、第61次南極観測隊がどの様に活躍しているかが、インターネット上で紹介されている。是非、ご覧になってください。

 

種子島の医師が南極へ

https://www.asahi.com/articles/ASMDN3PZLMDNTLTB006.html?iref=pc_ss_date

地方紙と共同通信のよんななニュース 南極

https://www.47news.jp/search?phrase=%E5%8D%97%E6%A5%B5

 

 

年末になり、さすがにセミナーなどに参加することもなくなってきて、ネタ切れ感があるので、たまには普段思っていることを書いてみたいと思う。

実際には、かなり小さいことと思われてしまうと思うが、普段の生活の中で、気になっているのが信号機のことだ。

僕の住んでいる家の近くの国道の交差点は、何故だが未だに右折表示がされない箇所がある。

ここを右折しようとすると、右折表示がされないので、信号機が黄色になった瞬間に急いで右折しなければならない。直進車が黄色になっても構わずに入ってこられると、そのまま右折できないままになってしまうこともしばしばある。せっかちな関西人は、こういうことがあると「めっちゃイライラ」してしまう。

 

また、都内で大通りを走っている時に、大通りの交差点の間にいくつかある信号が、全く違うタイミングでまちまちに赤信号になったりする。これに何の意味があるのだろうかと、いつも思ってしまう。

どうせ次の大通り交差点に差しかかった時に待たされるのだから、小さな交差点でも同じタイミングだけ、歩行者が渡れるようにしておけばよいのではないかと感じてしまう。

 

昨今、人工知能AIが、どんどん我々の生活の中に入ってきているが、この信号機の設置場所やタイミングについてこそ、AIに解析してもらうことが有効なのではないだろうか。こういったことを、科学的に検証して、一番スッキリと理に適った信号待ちのタイミングに、是非ともしてもらい。

実際に、これを国や自治体の予算として計上して行えば、莫大な費用がかかってしまうのかもしれない。しかし、これを大学で、大学生達にAI等で分析してもらい、研究として信号機の効率化を図ってもらえれば、一石二鳥なのではないかと思っている。

 

しかも、都道府県対抗や大学対抗で競ってもらい、非常に効果のあった取り組みを、文科省や経産省などが表彰するというようにすれば、様々な大学で実利に適った取り組みを作成していけるのではないだろうか。そして、そういった取り組みがニュース等で紹介されれば、各大学や各市町村の大きな宣伝にもなり、そしてもちろん、我々の住みやすいまちづくりにも直結していくことになる。

 

これらにより、不必要な渋滞が緩和されれば、こんな素晴らしいことはない。

今や、ドライブレコーダーもほとんどの車に取り付けられるようになり、自動運転やMaaS (Mobility as a Service:サービスとしての移動)と言ったことが話題にもなっている時代。ますますこれらを利用して、ビッグデータ解析を、住みやすいまちづくりや快適なドライブに、是非とも繋げていってもらいたいと思う。

「THE TEAM 5つの法則」(麻野耕司;幻冬舎)を読んでみた。これは、予想以上に読み応えがあり、読み終えるまでに結構時間がかかってしまった。我々医師は今まで、「チーム作り」についてなかなか体系的に学ぶ機会がなかった。このため最近、「チームビルディング」や「チームコーチング」などについて勉強しているわけだが、今回もその一環として面白そうであったため読んでみた。

 

麻野耕司氏は、株式会社リンクアンドモチベーション取締役。この会社でモチベーションエンジニアとして、組織改善クラウド「モチベーションクラウド」を立ち上げ、国内でのHRTechの牽引役として注目を集めているとのこと。ここまで書いて、どれくらいの方がこの経歴についてご理解できただろうか。僕自身も、どこまで正確に理解できているか怪しい限りなのだが、ただ、皆さんもこの本を読むことによって、これらの意味合いを徐々に理論的に理解していくことができるようになっていくのではないだろうか。

 

そもそもリンクアンドモチベーションと言う名前を聞いても、どういう会社なのか全くイメージできなかった。このため、仕方なくググって検索してみた。すると、僕も見たことがあるCMが紹介されていた。それは、会議で「社長、また退職者が出ました」という発言を受けて、社長役の役所広司が「残業は減らしたのか」「減らしました」、「副業は認めたのか」「認めました」、「打つ手なし‼」と言っているコマーシャルの会社ということが分かった。確かにこのCM、かなりインパクトがある...。

 

麻野氏は、「チームの法則」を、精神論や経験則ではなく、経営学・心理学・組織行動学・行動経済学など、様々な分野の学術的知見を取り入れながら、理論的かつ体系的に説明してくれている。そして、過去の社会システムに自分でも気づかないうちに囚われてしまっていたりすることから生じる誤解を解き明かし、本来あるべきチームの姿を見出し、チーム運営を活性化させていくには如何にしていけばよいかを解説していってくれる。

 

実際に、リーマンショック後で業績が落ち込んでいた時期に、コンサルタントとしてクライアントに組織変革のノウハウを伝えているだけでなく、自社内でも徹底的にこれらのエッセンスを実践したとのこと。そうしたところ、売り上げが10倍になり、退職率も20~30%から2~3%まで抑制することができたとのこと。この成功事例も相まって、組織改善クラウド「モチベーションクラウド」は世間で大きな注目を集めるようになったそうだ。著書の中でも「想像していた以上の変化が、私達のチームに訪れたのです」と記している。

これは、僕達が伊豆で経験した「医師の働き方改革」と同じような現象だなと、読んでいて感じた。ただ、僕らは正直なところ、明確なビジョンがあった訳ではなく、結果的によい方向に動いていたというレベルであるが…(苦笑)。

 

本書の中で印象的であったことの一つに、「チーム組織内のルール設定をどうしていくか」という解説があった。設定していくためには、まずはチームを4つのタイプに落とし込み、それぞれのタイプに合わせて、ルールの設定を調整していくというものである。4つのタイプを考えるにあたり、「人材の連携度合い」と「環境の変化度合い」の2軸で考えていくとのこと。「人材の連携度合い」が高いのがサッカー型と野球型、低いのが柔道団体戦型と駅伝型。一方で、「環境の変化度合い」が高いのがサッカー型と柔道団体戦型、低いのが野球型と駅伝型。野球型はルール設定が多く、リーダーが決めることが多く、プロセスを評価していく。逆に柔道団体戦型はルール設定が少なく、メンバーが決めることが多く、成果を評価する。確認頻度は、サッカー型が多く、駅伝型は少ない。病院内で例えると、サッカー型は救急外来全体のマネージメント。刻々と重症度合いの異なる患者が次々と来院し、救急ベッドの空き状況や入院ベッドの空き状況も変化していく。心筋梗塞でカテーテル入院するような循環器内科の場合は、柔道団体戦型か。ルーチンワークが多いが、カテ室やCCUといった各セクションで万が一苦戦することがあれば、その都度、次の対応を考えていく必要がある。1型糖尿病患者のCSII(インスリンポンプ療法)導入目的の入院などは駅伝型か。あまり急性のトラブルは少なく、患者さん本人の理解度もよければ、淡々と進められる。野球型は、一般的な内科や外科病棟の業務か。様々な疾患の患者が入院してくるが、それぞれに対して、各々専門の内科医や外科医がしっかり対応していく。

こういった大まかなイメージ分類を行い、それによってルール設定を見本に照らし合わせながら行っていけば、病院内のそれぞれの職場や各職種によって、だいぶ明確な独自のルール設定をすることができ、かつ、各現場で柔軟に対応を取っていけるのではないだろうか。

 

著者は、「F1レースはコンマ1秒を争っていますが、どのチームも必ずピットインします。ピットインでロスする時間よりも、すり減ったタイヤで走り続けることでロスする時間の方が最終的には長くなるからです。 メンバーのエンゲージメントが低いまま走り続けるチームは、まさにすり減ったタイヤで走り続けるチームだと言えます。」と述べている。

著者らは「チーム作り」を自ら実践したことによって、「チームの共通の目的の実現に向けて、力強く走ることができるチームが生まれました。」と言っている。

今度は、全国の医療機関で「チーム作り」について真剣に考える時間を作り、すり減ったタイヤで走り続けることを止め、力強く走り直す、そういった時期に来ていると言えるのではないだろうか。

「残業学(明日からどう働くのか、どう働いてもらうのか?)」(中原淳+パーソル総合研究所;光文社新書)を読んでみた。これは、今年、自分が読んだ本の中で最もお薦めの1冊かもしれない。

 

「パーソル総合研究所・中原淳 長時間労働に関する実態調査」として、昨年・一昨年の2回、全国の従業員数10人以上の企業の正社員(20~59歳)を中心に、総計22000人規模のデータを集め、残業についての分析・解析を行ったとのこと。この本では、その結果・エビデンスを踏まえて、具体的な解決策の提案もされている。

 

やはり、大規模な人数のデータ解析をしてみると、色々と興味深い新しい知見を得ることがある。

まず、60時間/月以上の残業をしている層は、「ストレスを感じているが、幸せ」と感じる割合が高くなっていた。これを、彼らは「残業麻痺」と命名している。

しかし一方で、60時間/月以上の残業をしている層では、「上司からのフィードバックが得られない」「仕事を振り返る機会がない」「忙しすぎて余裕がない」、「職場外での学びができない」といった成長阻害要因も、結果として如実に高い結果となっていた。また、総務省統計局「平成28年社会生活基本調査」では、80時間/月以上の残業をしている人達は、学習・趣味・自己啓発・社会参加活動などの時間が約4割も削られているとのこと。

 

また、残業しているのは、一般従業員よりも上司層で多く、その中でも課長職が最も残業を強いられていた。そして、残業施策ありの企業では、特に「部下に残業を頼みにくくなった(30.4%)」「休憩時間にも仕事をすることが増えた(30.0%)」と、近年では上司層が残業関連のプレッシャーを強く感じていることも分かった。

上司の仕事の割り振り方で見ると、平等に仕事を割り振る(39.6%)よりも「優秀な部下に優先して仕事を割り振っている(60.4%)」ことの方が、実際には多いこともデータとして示されている。

一方で、20歳代・30歳代の若い人や、常時残業時間が長い職場ほど、「周りの人がまだ働いていると、帰りにくい雰囲気がある」と答えており、「手が空いていると、常に別の仕事が割り振られる」と45時間/月以上の残業をしている一般従業員の30.4%が回答している。これらを、筆者らは、残業の「集中」「感染」と表現している。

そして、部下の残業時間の長さが「上司の若いころの長時間残業経験」と最も強く相関していたとのこと。これを筆者らは、残業の「遺伝」と言っている。

 

なかには「残業代を前提とした家計の組み立て」を行っていると回答している人が40.5%、「基本給では生活に足りない」と回答している人が60.8%もいた。

 

こういった悪循環を解消していくためには、減った残業代を「還元」することも考える必要があり、実際に実施している例として、SCSK株式会社や株式会社武蔵野、株式会社ディスコなどを挙げていた。

 

また、「希望のマネジメント」として、組織の生産性を高めていくためには、「グリップ(組織状況の把握)x(現場進捗の把握)」「ジャッジ(迅速・明確な判断)x(「何が大事か」の意思決定)」、「チーム・アップ(オープンな風土)x(ディスカッション)」という3つの力が必要であると説いている。

そして、それらを現実化していくためには、「業務の透明性」「コミュニケーションの透明性」「時間の透明性」が必要だともしている。

 

令和の時代の日本では、働き続けることが、もはや直接的に「豊かさ」を導かなくなってしまった。と同時に、すでに長時間残業が多くの点で日本経済の「足かせ」となってきている。こういった時代においては「残業をしない」という強い組織開発に対して、経営陣が強くコミットメントする必要がある。そして、従業員の個々の能力が最大限に発揮できるように業務改善を行い、「時間あたり成果」を上げられるように「チーム」としての職場づくりを行い、仕事と生活が共栄していけるよう、みんなで様々に協力し合って、時代を変えていくことが必要なのではないだろうか。

昨日の日経新聞の朝刊に、「産業医 交代相次ぐ;社員の健康管理、法改正で見直し 知見不足の医師排除」というタイトルで、産業医関連の記事が載っていた。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191212&ng=DGKKZO53238770R11C19A2CR8000

記事にもある通り、産業医の役割を強化する働き方改革関連法が今春に施行されたこともあり、産業医を再選任する企業が相次いでいる。一番典型的な例は、ストレスチェック後の社員の面接指導を産業医に求めたところ、断られてしまったという事例。今までは、まさに「腰かけ産業医」が多く存在し、結果として産業医の『名義貸し』が横行していた。しかし、令和の時代に入り、企業は産業医を活用し、電通の新人女性社員の自殺のような過労死事案を防ぐことが、社内での重要課題の一つとなっている現在では、「実務経験が豊富で企業の要望に十分に応えられる産業医」がますます強く求められるようになってきている。

その産業医の二極化が浮き彫りとなってきていることを、この記事は上手に表現しているなと感じた。

実は今回、僕も日経新聞の記者の方にインタビューを受けていた。

そもそものきっかけはhrms-jp医療人事労務マネジメント研究会代表の社会保険労務士である河北隆さんから、日経新聞の取材を受けてみないかとお誘いがあり、同席させていただいた。

2時間近く、今回の産業医腰掛け問題や、医師の働き方改革についてなど、ざっくばらんに色々ディスカッションすることができた。

残念ながら、僕の名前は記事に出ることはなかったが、まずは「医師の働き方改革」についてなど、自分が取り組んでいる内容などの話しを聞いてもらえたことは大変良かったと思う。

そして、記者の方から、最近産業医を変えた企業や、産業医派遣について詳しい人を紹介してほしいと言われたので、あるIT企業と、メディカルトラスト(現 日本産業医支援機構 執行役)の佐藤典久さんをご紹介した。

 

そういった取材の内容も記事に含まれていたが、最近は産業医業界が良い意味でもそうでない意味でも、注目度がどんどん高まってきており、世の中的にもホットな領域になって来ているのを、日々肌で感じる。そして、先月のセミナーで河北社労士とともにご一緒させていただいた、企業内弁護士等で活躍され、労務関係に詳しい、小島健一弁護士が「産業医が労使の対立の仲裁を求められる場面が増えており、生半可な知識では役割を果たせない。」とコメントされている。全くその通りだと思う機会が本当に増えてきており、そういった意味では、日頃からしっかり勉強や情報収集を行っていかなくてはと、改めて気が引き締まる思いである。

先週末、「医療と芸術の融合をめざして」といったタイトルで、順天堂大学と東京藝術大学の合同・公開シンポジウムが催されていたので参加してきた。

今回が初めての試みということであったのだが、予想以上に密度の濃い内容であった。

 

最初に両大学の理事長と学長から挨拶をされたのだが、なかでも、澤和樹 東京藝術大学学長は、自ら1曲バイオリンの独奏もされた。壇上でスピーチをされた後、おもむろに楽器を取り出されて演奏された。ウォーミングアップも全くないにもかかわらず、本当によい音色で、特にピアニッシモが非常に素晴らしかった。やはり、一流のプレイヤーはどんな状況であっても、聴衆を魅了する演奏ができるという、プロの凄さをまざまざと見せつけられた思いであった。

 

また、山下靖喬氏の津軽三味線も本当に勢いがあり、ギターでいう速弾きのテクニックのレベルの高さに圧倒された。爆笑トークも冴え渡っており、会場の聴衆を完全に巻き込んでの演奏で、これまた本当に素晴らしかった。

その他にも、外国人僧侶のザイレ暁映氏や、リハビリメイクで多くの患者さんのQOLを向上させているかづきれいこ氏の話など、医療と芸術の範囲をもさらに超えるような内容で、本当に盛りだくさんであった。

 

そして、この夏に全日本医科学生オーケストラフェスティバルの実行委員長を見事に果たした、順天堂交響楽団の朝妻君も、事例報告として、医学生のオーケストラでの活動や、東京藝術大学生との交流についてプレゼンテーションを行ってくれた。

順天堂大学はどうしても体育学部があるために、学内の雰囲気は運動系の部活が幅を利かせているところが伝統的にあった。しかし最近はそういった校風も時代とともに薄れてきているようで、実は順天堂交響楽団の団員は70名程度と、現在では超巨大部活になっている。看護学部生も含めると約100名の部員がいるとのこと。そういったことを、今回のプレゼンテーションで順天堂大学の内外に知ってもらえたことは、本当に貴重な機会であったなと思う。

これも、朝妻君が総勢200名におよぶ全日本医科学生オーケストラフェスティバルの実行委員長を頑張ってやり遂げてくれたお蔭だと思う。そういった意味でも、本当に感謝したいし、お疲れ様でしたと改めて言いたい。

 

余談であるが、この順天堂大学と東京藝術大学との交流のご縁で、現役東京藝術大学生のTuba奏者を紹介していただき、実は月1回個人レッスンを受け始めた。

もう楽器を吹くことも年齢的に難しいと思って諦めようとしていたのだが、藝大生の若い先生に教えてもらえるのならと、一念発起して個人レッスンを受け始めるようになった。

1回目のレッスンから、スパッスパッと的確なアドバイスを立て続けにいただき、急に晴れやかな音が出るようになったことで、自分でも驚いてしまった。常に一流で活躍されている方は、やはり大切なポイントが本当に分かっておられるのだなと、改めて感心した。

 

これからの時代は、医療もコミュニケーションが今まで以上に求められる時代となってきている。そういった時代を生き抜いていく上で、医療と芸術の融合が注目されるということは、必然なのかもしれない。

今週、4日続けて講演会を行った。水曜日は座長であったが、いずれも話す内容が異なっていたので、やはり準備などで何かとバタバタしてしまった。

 

月曜日:「コーチングにより医師の働き方を変える:糖尿病診療の業務改善により、残業時間を減らし収益を上げた実例から学ぶ」横浜労災病院 職員研修管理委員会 第14回経営塾講演会

火曜日:「糖尿病専門医が語る「がんや認知症は糖尿病の合併症!?」」2019 年リンケージ・ユーザー atベルサール東京日本橋

水曜日:座長;「出張先・旅行先での感染対策は大丈夫? 亀田京橋クリニック感染症科医師が教える海外渡航の注意点」亀田総合病院 感染症科部長 大澤良介先生 at WeWork Tokyo Square Garden(京橋)

木曜日:「『産業保健勉強会 〜保健指導を見つめなおしてみる〜 』第8弾 働き方改革の時代における生活習慣病対策:脂肪肝・脂肪筋・腸内フローラについて~糖尿病専門医と産業医の立場から~」at 株式会社メディカルトラスト本社

 

この大澤先生の感染症のお話しは大変勉強になった。

我々日本人は、日常生活の中で、ワクチンについて、その重要性についての意識が希薄なところがあるかもしれない。しかし、海外渡航する時には非常に厳格にワクチン接種を行っているか否かのチェックをされることも多々ある。

どの国に行く時は、どのワクチン接種が必要か。そして、そのワクチンは何回接種する必要があるのかといったことは、一般人には非常に分かりづらい。しかも、何種類かのワクチン接種が必要な場合は、実際に渡航しようと思うと、どの様なタイムスケジュールでワクチン接種を接種していけばよいのか、ということまでプランを立てていく必要がある。こうなってしまうと、やはりトラベル・ワクチン外来といった専門の先生の外来で相談せざるを得ないのではないだろうか。

産業医をしていても、社員などから相談されることが時折あったりするので、非常に貴重なお話しをたくさん聴くことができた。

 

また、月曜日は、横浜労災病院の副院長で子どもセンター長ある城裕之先生にお声をかけていただいて、「医師の働き方改革」についての講演を、病院長はじめ、院内の医師・看護師等の方々にお話しをさせていただいた。

横浜労災病院では、すでに残業代については全額支払うようになったとのこと。このため、城先生は、若いドクターの方が長い時間働いてくれているから給料がいいんだよと苦笑いされていた。

そして、2024年4月に向けて、どの様に考えながら対策を取っていけばよいのか、意見交換もさせていただいた。こういった、「医師の働き方改革」に向けていち早く動き出している病院には、今後若い医師や看護師の方々は安心して働けるという思いから、ますます優秀な人材が集まってくるのではないだろうか。

 

今週の講演群を何とか無事に終えることができ、自分としては、今年の講演をすべて終えることができた。本当に有り難いことに、今年は40回以上の講演やセミナーなどをさせていただく機会を得た。

来年はここまで回数は多くならないとは思うが、「働く人たちが元気で働き続けられる」ように、様々な形でのサポートや支援を引き続き、続けていけたらと思う。

聖路加国際病院副院長の百枝幹雄先生のお話しを聴くことができた。百枝先生は女性総合診療部部長で、

「パフォーマンス向上のための月経マネジメントとその費用対効果」というタイトルでお話しをされた。

 

非常に印象的だったのは、「働く女性の健康問題」に絡めて、女性のプレゼンティーズム等の生産性に関するデータをご紹介されていたことだ(Tanaka E, et al.; J Med Econ 2013;16(11):1255-66)。

これによると、月経関連症状の経済的負担の71.9%(約4911億円)が「労働損失」とのこと。一方で、通院費用や市販薬費用は合わせても残り28.1%(約19171億円)であったとのこと。こういった生産性についてのデータは、経営者達に意識してもらう上で、最も効果的なのではないかと思う。

 

百枝先生は、子宮内膜症啓発会議を設立し実行委員長をされるなど、子宮内膜症の専門家で、この治療方法について、分かりやすく教えていただいた。

子宮内膜症と診断された時に「妊娠の可能性は残したいけれど、当分はその予定がない」あるいは「妊娠の希望はないが手術は避けたい」という場合には、薬物療法を考慮する。薬物療法には「対症療法」と「ホルモン療法」がある。

対症療法として処方される鎮痛剤は、痛みの原因となるプロスタグランディンの分泌を抑える薬である。痛みがピークに達してから使用するよりも、痛みがひどくなる前(月経開始前)からの服用のほうが効果は高いため、結果的に薬の使用量も最小限に抑えることができる。対症療法で十分な効果が得られない場合、あるいは明らかな子宮内膜症病巣が存在する場合には、ホルモン療法を行う。

ホルモン療法には大まかに「偽妊娠療法」と「偽閉経療法」の2つがある。

「偽妊娠療法」は、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬あるいはプロゲスチン製剤を用いて、黄体ホルモン(プロゲステロン)による子宮内膜症の抑制を図る治療法。「偽閉経療法」は、GnRHアナログ製剤によって人工的に閉経状態をつくり、卵胞ホルモン(エストロゲン)を減らすことによって子宮内膜症の抑制を図る治療法である。

「偽妊娠療法」では、まずはホルモン量も副作用も少ない低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(いわゆるピル)を使用。排卵と子宮内膜の増殖を抑えるため、月経量が減って月経痛が軽減される。また、ピルはもともと避妊薬であるため、女性の症状コントロールに適している。プロゲスチン製剤は選択肢が広がっており、子宮内膜症病変に直接働きかける作用のある製剤も。服用中に不正出血が起こりがちではあるが、疼痛改善や病巣萎縮効果についてはピルよりも強力である。

「偽閉経療法」に用いるGnRHアゴニストは通常6ヶ月間続けて使用するが、人工的に閉経状態をつくるために、更年期様症状(のぼせ、ほてり、肩こり、発汗、頭痛など)の副作用がある。有効性は高いが長期間連続して使えないため、偽妊娠療法では効果が不十な場合や、手術前や閉経前などに用いることが多い。

日本では、まだまだ保険適応になっている、いわゆるピルによる治療は認知度が低いかもしれない。しかし、働く女性で「妊娠の可能性は残したいけれど、当分はその予定がない」という人には非常に有用な治療であると言えるのではないだろうか。

また、このような情報を、一般の女性に広く入手しやすいように、百枝先生らは、日本子宮内膜症啓発会議(通称:JECIE)を設立された。このJECIE(http://www.jecie.jp/)は、女性関連学会・啓発団体・企業・メディアが一体となって女性の健やかな一生のために様々な手法を交え、月経困難症や子宮内膜症に関する啓発活動を行い、全ての女性が産科・婦人科へ行きやすい環境づくりを目指し活動しているとのこと。実際に見てみると、非常に多くの情報を得ることができるので、是非有効に活用していきたいと思う。