2月 2020

「読書という荒野」(見城徹 著;幻冬舎)を読んでみた。ご存知の通り、幻冬舎社長自らが執筆した本である。見た目も厳つい印象があり、本のタイトルも荒々しい。そこから、それなりに気合の入った内容なのだろうなとは、誰しも思うであろうが、内容はその予想以上に「殺気」と言えるほどの迫力あるものであった。

 

本の表紙裏にも「読書の量が人生を決める。本を貪り読んで苦しい現実を切り拓け。苦しくなければ読書じゃない!」と、昭和の青春マンガ顔負けの気合の入り方である。

ただ、どうして著者がここまで読書、出版に対して心血を注いできたのか、それをカミングアウトするために、第1章では、自分の半生を振り返り、しかも、如何に自分が弱かったかが、実父との確執やいじめにあっていたことも含めて、赤裸々に書かれている。

見城氏は、静岡県清水市(現・静岡市清水区)の生まれ。先日、おなじ清水市出身の「ちびまる子ちゃん」の作者であるさくらももこ氏の本を読んだばかりであったので、この超ハードボイルドと超ゆるキャラとのギャップに、失礼ながらちょっと笑ってしまった(苦笑)。

 

さて、話しを元に戻すが、この本の中で、著者が影響を受けた本がたくさん紹介されている。そのほとんどが日本人作家の本である。僕自身、特に昭和の時代の作家の本は、あまり読んでいないことに気がつかされた。特に若い頃であったため、あまり難しい本は読もうとしなかったということもある。

 

ただ、この本を読んで、無性に読んでみたいと思わせられてしまった作者が何人かいる。

五木寛之、石原慎太郎、大江健三郎、中上健次などなど、名前はもちろん知っているが、作家としてどの様な本を書いているかは、お恥ずかしながらほとんど知らない。この中では「太陽の季節」を、それも途中まで学生時代に読んだことがある程度ではないだろうか。

 

著者が編集者として、これらの著名な作家に如何に本を書いてもらうか、そのアプローチ方法は想像を絶している。その迫力や熱量・熱意は、今の若い人達にどの様に伝わるのであろうか。

しかし、どうしてもやり遂げたいことがある時に、ここまでしてでも人を動かしていくということは、だんだん年を取るほどできなくなってくることである。僕自身の反省とともに、やはりこうやって熱い想いを持つことで成功している人もいるのだと言う、改心にもなる、よい機会になったと思う。

そして、久しぶりに昭和の日本文学を読む時間を作ろうと思った。

「医の希望」(斎藤英彦編;岩波新書)を読んでみた。これは昨年の第30回日本医学会総会の時にプログラム等と一緒に配布されていた本である。このため、目にされた先生方も多いのではないかと思う。

無料配布本であったので、恐らく斎藤先生の自叙伝か何かかと思っていた。

 

大変失礼ながら、僕自身、酷い雑読派なので、ブックオフの買取用の段ボールに入れる前に、ちょっとだけ読んでみようかと思い手に取ってみた。そうすると、斎藤先生以外の有識者・研究者の方々の自叙伝的な内容であったので驚いた。著者の中には、ノーベル医学生理学賞を受賞された山中伸弥先生や、介護支援用・自立支援用ロボットなどのサイバニクス技術で有名なサイバーダイン社CEOの山海嘉之・筑波大学教授といった、錚々たるメンバーが執筆されていた。いずれも日本をリードされている先生方であったので、予想に反して一気に読み終えてしまった。

 

その中で、特に気になったのが、宮野悟・東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長の章である。タイトルは「人知を超えて医療を支援するAI」。この宮野先生は日本IBM株式会社のワトソンを活用し、白血病患者さん達の診断・治療にAIをしっかりと役立てておられることで知られている。

最近では、患者さんに同意を得て、その患者さんの全ゲノムシークエンスを行い、そのデータをワトソンで解析させているそうだ。AIを活用すると、東大の先生方でも診断までに2週間を要するような難しい血液腫瘍内科系の疾患であっても、ワトソンではわずか10分程で調べてしまうとのこと。今までであれば、病理組織検査でもなかなか分からなかったような、非常に稀ながん腫瘍も診断がすぐにできるようになり、しかもその文献情報や使用できる薬剤についても、ワトソンが膨大な医学論文を検索してくれて、専門医たちにこれらの医学情報を提供してくれるようになってきている。

とにかく、病院で働く臨床医にとって、難治性疾患などの患者を目の前にした時に、ただでさえ病状管理だけでも通常以上に時間が費やされてしまう中で、その患者さんの診断・治療についての文献検索等をおこなう業務は、本当に労力的にも精神的にもかなりの負担を要する。そのサポート役として、こういったワトソンのようなAIが当たり前のように活用できるようになれば、臨床医にとって非常に心強い相棒となるであろう。

 

私もIBMに勤めていた時に、ワトソンは2000万件の英文医学論文を学習し、病気診断・治療に役立てていると言う話しを聞いていた。実際に宮野先生も箱崎の本社にお越しになり、医科研での取り組みなどを話されたこともあった。しかし、改めて医師向けに書かれた著書を拝読し、より具体的にどのようなことを考えて、ここまで医療とAIの融合をされてきたのかと言ったことについて、私自身の理解が深まったと思う。

そして、「ビヨンドワトソン」という項では、「未来の医療は、フィジカルな空間とサイバー空間が融合したものとなっていくでしょう。そこでは、AIがクラウドとともにインフラとなり、人々はその存在を日常的に意識することはなくなります。そのためにはセキュリティの高レベルでの担保やプライバシーの保護などの技術や仕組みが開発されることが必要です」と書かれている。

 

現在の携帯電話のように、医療にはAIが当たり前のように導入され、そのことが多くの患者さんや医療関係者へ大きな恩恵を与えてくれることを是非とも期待したいと願う。実際には、そういう時代が我々が思った以上に早く訪れるのかもしれない。

Basical Health産業医事務所で始めた、このブログも今回で200回を迎えるようだ。

これは、ブログをアップする時にカウントが出ているので、そういうことらしい。

 

開始当初は週4回書いていたが、とても継続してこなしていけないと感じ、今は基本的に週2回のペースになっている(ご承知の通り、忙しい時はかなりつじつま合わせになってしまっていることもあるが…(苦笑))。

正直なところ、あまり人に読んでもらおうという意識はなく書き続けているところがある。むしろ、自分が経験したり、勉強したことを、きちんと書き残すために行っているということを大切にしようと思っている。

ただ、意外にもそれなりにこのブログを読んでくださっている方々も少なからずいて、時折りお会いした時に、ブログの内容の話題で盛り上がることもあり、大変有り難いことだと感謝している。

 

今まで、講演会を聴きに行った後に文章でまとめてみるようなことは全くしてこなかった。ただ、このブログを始めて、できる限りA4の紙1枚程度に感想や参考文献などを記載するようになり、後々見返せるようになったことは、非常に自分自身にとって良かったと感じている。しかも、もしその文章が、どなたかのお役にも立つこともあれば、それも非常に嬉しいことだと思う。

 

本当は、医学論文などももう少し読み、それらをサマライズして、このブログにアップしていきたいとも考えているのだが、なかなか大学院生時代のようにはいかないなと、自分の根気の無さを改めて感じてもいる。

また、時事ネタについても何となく遠慮があり、あまり書いてこなかったが、今後は少しずつコラム的に書く頻度を増やしていけたらなと思っている。

 

産業医系、糖尿病・生活習慣病系、いずれの系統も話題はふんだんにあるわけなので、なるべく色々と自分なりにアンテナを張り巡らせて、新しくて興味深い内容をどんどんこれからも情報発信していけたらと思う。

 

皆様、これからもあまり期待せず、そして気軽に読み捨ててもらえればと思います。

今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

「職場を幸せにするメガネ」(小林嘉男;まる出版)を読んでみた。サブタイトルは「アドラーに学ぶ勇気づけのマネジメント」。

アドラー心理学やコーチングスキルの大切さが非常に分かりやすく書かれているのだが、この本は「今更ながら、コミュニケーション手法を学んで、職場の雰囲気を良くしたい」と思っている人が、まず最初に手を取る時にお薦めの本かもしれない。

 

その理由としては、著者自身が元々は「ギスギスした職場をつくり出す張本人」であったからだ。以前は、がむしゃらに働くことが成果を出す一番の方法だと信じていたとのこと。朝から晩まで馬車馬のように働き、そのスタイルを部下にも求めていた。

しかし、ある日、部下から「無記名でフィードバックさせてほしい」と要望され、そのフィードバックシートに記載されていた内容は「鬼」「半導体のように冷たい冷徹人間」…。

そして、著者は「一生懸命やってきたのにダメ出しされるのは、こんなに悔しい」ものだということに初めて気づいたとのこと。

 

そして、辿り着いたのが「戦わない経営」(浜口隆則;かんき出版)という本。

この本の一部が紹介されているのだが、その言葉が素晴らしい。

 

会社は幸せを作っている。

(略)

だから、社長は「幸せの専門家」じゃないといけない。

会社に関わるすべての人が、どうやったら幸せになるのか?

社長は死ぬほど考えなきゃいけない。

幸せについて、もっともっと勉強しなきゃいけない。

それが、社長の仕事。

 

そしてもう1冊、「成功するのに目標はいらない!」(平本あきお;こう書房)という本と出会った。

その1節が以下の文章。

 

人は、ビジョンと価値観に基づいた「自分軸」を大切にして生きるべきである。

誰もが「人生の主人公」として生きることができる。

 

これにより、著者は「すべての人に「自分軸」があり、誰もが「人生の主人公」として生きることができる」という考えに至ったそうだ。

 

そして、「上司と部下、全員の意見を反映しながら作っていく」、「部下が上司を信頼できる関係を築く」、「「部下の関心」について関心を持つ」、「「主役は部下」を徹底する」という考え方を持ちながら、私費を投じてコーチングなどのコミュニケーション学を学び続けてきたとのこと。

こうした努力を積んだ結果、

上司から感謝された部下は、自分が職場や上司に貢献できた「貢献感」を味わうことができ、上司をさらに信頼できるようになる。そして、その部下は職場の仲間にも貢献できるようになる。こうやって、上司の「感謝」が部下の共同体感覚を強めていくことになる。

 

そうしていくことによって、ピンチな場面に直面した時でも「みんなで協力し合い、ピンチを乗り切る」ことができるようになったとのこと。

 

これこそが、「これからの時代を勝ち抜いていくための組織づくり」だと、僕は読んで感じた。

昨日死去された野村監督の名言の中にも、「失敗と書いて成長と読む」という言葉がある。この著者はそれを地で行った方ではないだろうか。

最近、何となく気になっているニュースの中に「人工肉(植物肉・代用肉)」の話題がある。

アメリカでは、マクドナルド等といったファーストフード店が、相次ぎ人工肉(植物肉)をメニューに採用し始め、しかも一大ブームになるほどの人気を博しているとのこと(日本経済新聞電子版 2020年1月21日)。

僕自身もたまに大豆で作られた牛肉不使用のハンバーグなどを食べることがあるが、どちらかと言えば味音痴の自分としては、全く違和感なく食べられる。そもそも人工肉と言われなければ気がついていないと思う。

 

ベジタリアンやハラルと言った観点からも歓迎されており、そして、アメリカでは、時々肉を食べない日を設ける「フレキシタリアン」が増え続けているらしい。また、中国においても、メタボや糖尿病患者数が爆発的に増加してきているため、注目度は高いそうだ。また、豚コレラの問題もあり、豚肉価格の高騰や豚肉の安全性に対する懸念なども、代替肉の台頭の要因となっている。

 

一般の肉類と比較して、ヘルシーで、しかも非常に環境面でも優しいため、多くの研究者やベンチャー企業などの開発競争が激化してきているようだ。特に植物肉となる原料の植物は、「クリーンミート」と呼ばれたりもしており、テクノロジーを使って研究室で開発され、その植物はプラントで作られたりしているとのこと(日本経済新聞電子版 2019年12月2日)。しかも、日本も含めて、見た目だけでなく、グルタミン酸の研究やヘムの研究と言った、味や食感も本物の肉そっくりな人工肉の研究も大変盛んになってきているらしい。あとは人工肉の価格がどこまで低価格になっていけるかが課題なのかもしれない。

そして将来、何十年後かには、酪農や飼育場、食肉処理場が、世の中から激減していくこともあるのだろうか。そして、これによってメタボな人も減ったりするのだろうか?

 

 

東京オペラシティコンサートホール(京王新線初台駅直結)
2020年7月26日(日)14時 に延期になりました。

東京オペラシティコンサートホール
指揮:曽我大介  独奏:大谷康子
曲目:ヴェルディ 歌劇「運命の力」序曲
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調
ベルリオーズ 幻想交響曲

S席2500円、A席1500円(全席指定)

<チケットのご購入>
・コンサートイマジン03-3235-3777にお電話でお申込みください。
(電話受付時間:10:00-18:00、日曜祝日を除く)
チケットぴあ、東京オペラシティチケットセンターでもご購入できます。

http://ikakan.main.jp/next/

実は、昨年末に2つ登録商標が認められた。

一つは「Bsical®」、もう一つは「令和の時代は幸せスリム®」である。

 

Basical Health産業医事務所のホームページにも、記載させていただいている通り、実は「basical」と言う英単語はありません。

食事や運動といった糖尿病やメタボリックシンドロームの基本的(basic)なことでも、まだまだ知られていないことがたくさんあります。その基本的(basic)だけれども、新しい取り組みを「basical」という造語に込めて、Basical Health 産業医事務所では、積極的に取り入れて、皆様に提供していきたいと考えています。

 

この気持ちを登録商標としても登録できないかと考え、ライフプラン株式会社の本田祐介社長に相談して、手取り足取り登録に向けての方法や手続きを教えてもらった。

もちろん、僕自身は全く知識も知り合いもいなかったので、色々と助けてもらい、本当に有り難かった。こうやって、教えてもらいながら、一緒に調べていくと、オンラインで申し込むことができ、調査も無料だったりした。そして、特許庁への出願においても早期審査を希望すると追加料金がかかり、どの区分に登録するのかも決めていかなくてはいけないことが分かった。

商標登録の区分は、全45種類からなるカテゴリで分類されていて、各区分毎に申請をしなくてはならない。全区分で登録商標を取ろうとすると莫大な費用がかかってしまうことになる。このため、我々は

第44類、いわゆる「医療関係」の区分で申請を行うこととした。

商標が通過したとの通知が来ると、今度は登録手続きが必要になる。これには、5年と10年があり、商標登録料の納付額も異なってくる。こういった手続きやお金の流れがあるのだなと、今回も色々と勉強になった。

「令和の時代は幸せスリム®」も、以前から、「昭和の時代は幸せ太り。これからの時代は幸せスリム。」と、よく発表スライドの最後に「キーワード」として入れていた。それが、ちょうど昨年、年号が平成から令和に変わったので、それに彩かって「令和の時代は幸せスリム」と言い換えるようにした。

せっかく自分で言い出したのだから、登録商標で登録でもしてみようと、思いたち、今回チャレンジしてみた。

登録商標を取得したから「何?」と言われても、「さあ、これからどうしていこうか?」という程度しか答えられないのだが、とりあえず自分の名刺には「®」も入れたものに差し替えてみた。

皆さん、上手な活用法のアイデアがあれば、是非教えて下さい‼

「健康の経済学」(康永秀生;中央経済社)を読んでみた。サブタイトルは「医療費を節約するために知っておきたいこと」。著者は東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学・経済学教授で、外科医から公衆衛生学に移られた先生だそうだ。

 

中央経済社から出版されているということで、一般の方々向けに書かれた本であると思われるが、内容は本格的でかなりしっかり読まないと、スラスラと頭に入ってくるような類の本ではなかった。しかし、その分、日本の医療問題についてや、今後我々はどの様に考えていけばよいのか、大変勉強になる良著だと感じた。

 

参考になる項目がたくさんあったのだが、特に印象的だったのは、「予防医療の重要性」についての項目であった。以前は、予防医療を行うことによって医療費を削減するということが目標と考えられていた。僕自身も、そうしたいと思って興味を持ち始めたところがあった。ただ、予防医療が進み、みんなが長生きすれば、その分高齢者になってからの医療費が増えていってしまう。このため、医療費を減らすということはできないと考える方が正しいと、本著でも書かれている。

ただし、家庭医が地域住民の健康管理や疾病予防を担当し、住民1人当たりでの定額報酬を受ける「人頭払い」の仕組みを、イギリスに倣って導入すること等を提案されている。こういった仕組みを導入することによって、過剰・不要な検査や処方をかなり減らすことができる可能性がある。

患者さんにとっても、健康上の問題をいつでも身近に相談できる家庭の存在があれば、ドクターショッピングなどを行う必要も無くなるのではないだろうか。そして、働く世代が元気で暮らせることができれば、労働人口の減少の抑制にも寄与することができる。

 

その他にも、医師の地域偏在の問題や、医師の業務のタスクシフトについて、病院の再編や地域包括ケアシステムの重要性など、考えさせられる話題がたくさんあった。

各項目において、主要な医学的エビデンスも随所で紹介されており、どういった根拠に基づいているのかも明確なため、これからの日本の医療を考えていく上で、我々にとって教科書的な存在の本であると言えるのではないだろうか。