「天才を殺す凡人」を読んで

「天才を殺す凡人(職場の人間関係に悩む、すべての人へ)」北野 唯我 著:日本経済新聞出版社;2019を読んだ。

本のタイトルからして刺激的だ。そして、今まで漠然とそう思っていたこともあったが、こうやって言葉にされると、「なるほど!!」と思わず膝を打ってしまった。

 

それでも本のタイトルだけでは、若干怪しさがぬぐえないところがあるのではと勘ぐってしまいたいところであったが、これが日本経済新聞出版社から出版されており、さらに2020読者が選ぶビジネス書グランプリも獲得したとなると、いよいよ非常に興味がそそられる。

 

 

実際に中身を見て、非常に印象的だったのは、「天才」と「凡人」だけではなく、「秀才」を加えた「三者」で説明をしているところであった。

 

著者は「この世界は、天才と秀才と凡人でできている」と説いている。そして、この三者は、それぞれの感情によって殺し合うことがあるという。

例えば、「凡人は天才に対して、理解できないから排斥する」とのこと。一方で、「天才は凡人に対して、本当は理解してほしい」と考えているとのこと。これは非常に興味深い。その他の各々の感情も非常に面白いが、それは本文を読んでいただきたい。

 

これから日本でも、いよいよジョブ型の働き方が必要とされている時代になってきている。実際に、世の中の動きも年々大きく変化しており、会社において、昭和の知識や経験が役に立たず、足枷となってしまうことも多くなってきている。このため、年功序列(メンバーシップ型)の働き方が崩壊してきている。

 

その様な状況下の中で、「天才の若い社員」と「凡人の上司」という組み合わせが、残念ながら、至る所で見られるようになり、この時に思わず「凡人の上司」が「天才の若い社員」の才能を殺してしまうことが起こる。これは、その会社にとって「百害あって一利なし」となってしまう可能性を大いに秘めている。

 

そして結果的に、そうしたぞんざいな扱いを受けた「天才の若い社員」はすぐに離職。ジョブ型で「天才さ」を十分に発揮させてくれる企業に吸い取られていってしまう。

こういったことが、今や日本の歴史ある大企業ほど起こりやすい図式になっているのかもしれない。こうしたこともあってか、最近、こういった大企業もジョブ型の働き方を積極的に推し進める動きが出てきているのも事実である。

 

コロナが長期化することで、従来の働き方の問題点が際立って浮き彫りになってきた。そして、これを機に、日本での働き方は大きく変化していくであろう。そういった意味でも、本書のような考え方も念頭に置いて、新しい時代に対応できるように、経営陣も、そして働く人一人一人も、時代の変化に上手に乗り切っていけるように、まさに今、大きく変化する必要性を迫られてきているのではないかと考えられる。