「学校の中の発達障害」を読んで

「学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち」(本田秀夫 著:SBクリエイティブ2022)を読んだ。

 

「発達障害」という言葉は、だいぶ馴染みが出てきており、それなりに受け入れられる世の中になってきた気配がする。しかしながら、実際に学校でどのように対応・対処していけばよいのかと言われてしまうと、よく分からないというのが実情ではないだろうか?

 

最近、弁護士の小島健一先生のご講演や直接ご本人とお話しさせていただくと「自分も発達障害だから」とカミングアウトされた発言をされていることが多い。正直、僕自身も間違いなく子供の頃から注意欠陥・多動性障害があり、事実、母親が学校で担任の先生と面談するたびに「佐藤君は落ち着きが無くて」と小中9年間、言われ続けていた。当時は大きなお世話だとしか思っていなかったが、忘れ物が多いとか、ケアレスミスが多いなど、大人になれば治ると思っていたものが、そうでは無いということを、今さらながら日々痛感させられている。

 

この本では、すでに小学校入学までに発達障害が明らかになっており、特に学習障害がある場合は、通常学級ではなくて、入学当初から通級指導や支援学級等に通う方がよいと書かれていた。実際、その判断をすることは非常に悩ましいところもかなり多いだろうが、小児科の医師だからこそ、その経験も踏まえた意見であるので、大変参考になると思う。

 

我々が産業医をしていても、大人の発達障害は悩ましい問題になっていることも少なからずある。医療者や人事課職員、会社経営者・管理者が、こういった知識をみんなで理解し、臨機応変に対応できるようになることも非常に重要であると思う。

そういった意味でも、こうした本を読んでいき、リテラシーを高めることも大変大切だ。

もちろん、子育てや教育現場の方々は、現実として喫緊の課題の一つであろうから、是非お薦めの一冊である。

 

ただ、ここでも多様性を尊重した個別対応が望ましいことから、教育現場も時代に合わせ、画一的な教育からの脱却を強く求められる時代になっていると感じる。この時代のニーズに答えていくのは本当に大変だと思うが、みんなで何とか色々と知恵を絞って、地道に環境を変えていくアクションを起こし続けていくしかないのではないだろうか。