文天ゼミ100回記念

先月の文天ゼミは、文天ゼミ100回記念だったとのこと。このため、毎年恒例のシンポジウム形式であった。今回のミーティング・タイトルは「保健指導・予防医療、参加率向上の起爆剤」。

 

ご存知の通り、特定保健指導の実施率が上がらないのが、日本中の課題となっている。そういった中で、初回面談率を急激に上昇させた取り組みを行っている施設が登場し、そのスタッフがその秘訣を色々と

教えて下さった。

 

まずは、新浦安虎の門クリニックで特定保健指導を行っている管理栄養士さん2名と、当時協会けんぽ千葉支部で保健師として働いていた白田千佳子さん(現・株式会社リンケージ)のお話しだった。

彼女達の取り組みとしては、協会けんぽ千葉支部の依頼を受けて、新浦安虎の門クリニックでの特定健康診査時に、特定保健指導該当者に積極的に特定保健指導を行っていくという試み。これは、前年度の健診結果などから、予め事前に該当者を抽出しておいて、その人達が当日受診受付した時点から、保健指導を促すように声がけをして、検査の合間の待ち時間等に初回の保健指導を実施していくというもの。これにより、12%程度であった初回面談実施率が90%台まで上昇したとのこと。

 

次に、同友会(春日クリニック)の保健師さん2名が登壇した。彼女達は、巡回での健康診断受診時に、IoTを利用した遠隔での特定保健指導を開始したとのこと。これも上記と同様に、前年度の健診結果などから、予め事前に該当者を抽出しておいて、その人達が当日受診受付した時点から、保健指導を促すように声がけをして、検査の合間の待ち時間等に初回の保健指導を実施していくというもの。これにより、同じく5%程度であった巡回健診時の初回面談実施率が30%台まで上昇したとのこと。IoTを使用することによる苦労話なども話されていたが、今後非常に有用な手段であることは間違いないと感じた。

 

また、(株)バリューHRの菊地敬二さんからは、複数の健保組合に、「くうねるあるく」という健康づくりのインセンティブとICT・広報を組み合わせたオンラインタイプの生活習慣向上事業をご紹介いただいた。こういうサポート支援があっても苦戦している健保もある中、アビームコンサルティング株式会社は1回目参加率が38%と断トツで高かったとのこと。この理由を同社保健師の安倉沙織さんが解説してくれた。その理由として、保健師が全社員に周知してもらえるように工夫して丁寧に広報・勧奨活動を行っているとのこと。それに加えて、社内のコンサルタント職の社員がこの事業の脱落群を分析し、その群の人達向けにマッチした内容のメールを送信しているとのこと。これこそ、正しく本業と健康増進との力強いコラボレーションだと感じた。

 

このように、特定保健指導の実施率や健康増進事業への社員の参加率が高まって行けば、本当に社内の健康度合いが飛躍的に向上し、アブセンティーズムやプレゼンティーズムも抑制でき、社内の生産性も格段に上昇していくのではないだろうか。

そして、こういった成功事例がどんどん紹介されることによって、他企業もこれを参考にして、質の高い保健指導・予防医療を提供していくことにも繋がると考えられる。そうすれば、日本の中で働き方改革がよりドラマティックに進んでいくことも期待できる。

菊池さんは、この現状を「大チャンス」と表現されていた。本当に多くの方々に、こういった先駆者達の話しを聴いてもらう機会がたくさん増えていけばよいなと思う。