「スポーツの経済学」を読んで

2015年12月に初版された「スポーツの経済学 -2020年に向けてのビジネス戦略を考える-」(小林至;PHP研究所)を読んでみた。

 

著書の小林至という名前とスポーツを絡めると、ピンと来た方がおられたら、かなりのプロ野球通ではないだろうか。そう、この方は東京大学卒で千葉ロッテマリーンズに1992年にドラフト8位で入団した、あの小林至氏である。残念ながらプロ2年間で1軍登板はなく引退されたようだが、その後米国コロンビア大学経営大学院を修了しMBAを取得。江戸川大学教授、福岡ソフトバンクホークス取締役やスポーツ庁幹事をされたりと、幅広く日本のスポーツ経営学者として活躍されている。

実は、お互いの子供が高校野球部の先輩後輩だったと言うこともあって、興味深くこの本を読ませてもらった。

 

あまり、この分野の本を読んだことはなかったので、正直理解できるかどうか不安であった。しかし予想に反して、非常に分かりやすい文章で書かれてあり、スラスラと読み進められた。しかも、スポーツの経済的役割について、これまでのオリンピックやプロ野球、北米4大プロスポーツ、FIFAといった、我々に馴染みのあるスポーツイベントを例に挙げて、かつ具体的な数字で提示されていたため、大変理解しやすかった。

 

日本のプロ野球(NPB)は、なかなか黒字にすることが難しいと言われている。近年では地上波テレビでプロ野球の試合をリアルタイムで見ることは皆目無くなったと言っていいほどになってしまっている。ところが、驚いたことにアメリカンフットボール(NFL)やイングランド・プレミアリーグなどのテレビ放映権料などは、以前に比べて6~12倍も上昇しているとのこと。

この、欧米に比べて日本がスポーツを経済活動として上手に捉えられなかったことが、日本のスポーツの国際化を遅らせてしまった大きな要因の一つかもしれない。

 

しかし、こういった客観的データに基づいて、日本でもJリーグの盛り上がりやバスケットボールのプロ化(JBA)、そして現在行われているラグビーワールドカップ2019の大成功といった、成功事例を次々に排出するようになってきているようだ。プロ野球でもパリーグの盛り上がりは、30年前とは雲泥の差がある。こういったスポーツの経済的役割が高まるのを目の当たりにすると、日本の様々なスポーツが世界で通用するようになってきていると言えるのではないだろうか。

スポーツの分野においても、経済学者などと上手く「産学連携」を行って、しかも国・行政が後押ししてくれることによって、本当に日本選手のレベルが上がり、応援する我々の盛り上がりも非常に高くなる。

 

そしていよいよ、来年は東京オリンピック・パラリンピックの開催へと繋がっていく。

是非、野球・サッカー、そしてその他の様々な日本でのスポーツが、大切なコンテンツとしてグローバルにさらに広がって行けば、日本の経済としても、子供たちを含めた若い人達が育っていく環境としても、非常に好循環な環境を作り上げていくことができるのではないだろうか。