「問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション」( 安斎勇樹・塩瀬隆之著:学芸出版社2020)を読んだ。
かなりボリュームがあり、全部読むのが大変な本の1つであるが、内容が非常にしっかりしており、大変勉強になった。
まずは、タイトルにもあるように、「問い」について詳しく考察されている。
「問い」とはなにか。そして、「問い」というアクションを起こすためには具体的にどうすればよいのかといったことが、非常に忠実に書かれていると感じた。
はじめに、「問いの基本性質」が7つ紹介されており、「問い」によって、思考と感情を刺激し、創造的な対話を導き出す。そして、また新たな「問い」を生み出していく。こうやって、認識や関係性の固定化を少しずつ打破していき、新たな発想や解決策に導いていく。そのプロセスについて、これ以上ないほどに、しつこく、そして丁寧に語られている。そういった意味では、チームビルディングの研修を行いたいとか、よりよい管理職研修を行いたいと考えている人達には、うってつけの本だと言える。
そして、上記のような考え方だけでなく、実際にワークショップを開催することになった時に、どのように「問い」をデザインし、ワークショップの企画・運営・評価について、どう考え、どう行動していけばよいかについても、事細かに解説してくれている。
さらに興味深かったのは、ワークショップを開催する時に、その司会進行を行うファシリテーターは、どのようにワークショップを企画・運営・評価を行っていき、各フェーズでどれくらい困難だったかを点数化し、それを初心者・中堅・熟達者に分けて分析していた。
結果として、初心者はワークショップ開催中のメインな場面やその振り返りのフェーズが難しかったと回答しているのに対し、熟達者たちは、ワークショップ開催中ではなく、その開始前と終了後に難しさのピークがあった。
つまり、ワークショップ開催の成功の鍵を握っているのは、プログラムデザインの段階で決まっており、そこがしっかりと決まっていれば、実際にワークショップが始まってからも慌てることなく、落ち着いてファシリテーションを行っていることが解説されている。
これは、実際に日頃から様々な研修やセミナーを行っている人からすると、非常に頷ける結果ではないだろうか。
正直なところ、僕も、「医師の働き方改革」で医師を含めた医療関係者向けのチームビルディング研修を行う際は、必ず、ライフプラン株式会社の本田祐介代表取締役と二人三脚で行っており、彼が先方の要望にしっかりと沿った形で、いつも素晴らしいプログラムデザインを作ってくれている。
https://lifeplan-ri.com/company/
僕自身も、トレーニングを積んできたし、様々な内容の研修をさせていただいてきたが、やはり医療現場の先生方を相手に、絶対間違えない状況の中、しかも二度目の研修も考えにくい方々への研修にあたっては、この道のプロとしっかりと意見交換をしながら、準備できうる限りクオリティの高い研修になるように心がけている。
この著者たちも、東大や京大でも活躍されている方々であるが、ワークショップは基本的に複数人で開催されているとのこと。ワークショップや研修については「一期一会」の要素が強いところがあり、ある意味「一撃必殺」で二度目は無いという覚悟が必要なところがあることから、やはりできる限り最善を尽くせるようにと考えると、ファシリテーターは複数人で行うという結論に行き着くのではないだろうか。
実際にこの本は、4万部以上売れ、「日本の人事部HRアワード2021書籍部門 最優秀賞」に選ばれたとのこと。すでに読まれた方も多いのかもしれないが、是非、これからの組織運営を行うにあたり、クオリティの高いワークショップや研修会を行いたいと考えられている人にはまさに必読書であると言えると思う。