「変貌するヘルスケア業界 あらゆる企業がヘルスケア事業者に」(P&E Directions 編著:日本医療企画メディカ出版 2021)を読んだ。
これは、独立系コンサルティング会社であるP&E Directions社が書かれた本で、ヘルスケアという切り口で、これからの時代に一体何が起ころうとしているのかということも含めて、タイトルにもあるように、あらゆる企業がヘルスケアについて考えてみるきっかけ作りをしてくれている。
さすがはコンサルティング会社で、ヘルスケア産業について、非常に客観的に観察している。
「これまでのヘルスケア産業は豊富な儲けの源泉に守られ、それらを前提としたビジネスモデルにより事業を展開してきた。しかしながら、今後のヘルスケア産業はある程度限られた儲けの源泉の中で、急増する量的な需要に対処しなければならない事業環境に変化していく。すなわち事業の前提条件が大きく変化することで今までのビジネスモデルではもうけを出すことが難しく…。」「…、相対的に規制の緩い事業環境でヘルスケア市場が伸びていく…。デジタル化・テクノロジー活用など様々な工夫を凝らしたビジネスモデルを適用しやすい領域が伸びていく…。」
正に、仰る通りだと思う。
そして、「医療をリモートで提供できるようになると、リモート化が先行する非医療の分野と繋がり、分野によっては医療と非医療の境目が曖昧になり、両分野の連携が不可欠になる。」そして、この周辺を固める巨大なビジネスのエコシステムが出来上がり、大きなビッグチャンスが生まれるとも語っている。
加えて、具体的に、日本だけでなく、米国・中国・タイといった海外でのヘルスケア事業開発の成功事例も紹介してくれている。
本当に、ヘルスケア事業に興味を持ち、自分達の持っているスキルを、この業界に上手に落とし込んでいけば、様々な企業が参入していくことができると思う。
そういった意味で、一般企業の方々も、まずはこういった本を手に取ることは有益だと思う。少し興味がある人も、あまりない人であっても、非常に参考になると思う。
ただ一つ、残念ながら不足しているポイントがあるとも感じた。それは、ヘルスケア事業を行うにあたっては、監修する医師のクオリティの高さも極めて重要であるということである。いくら超優秀なAIを導入しても、それをまず教え込む医師の医療レベルが高くなければ、いわゆる「藪医者AI」が誕生してしまう。どんな医師や医療機関と連携を取るのかも、一般企業にとっては極めて重要なポイントであることを、是非多くの人に知ってほしいと思う。