News・Blog

昨年の本だが、「職場における性別ダイバーシティの心理的影響」(正木郁太郎著;東京大学出版会)を読んだ。

 

「働き方改革」を行っていく上で、どれだけ「多様な人が協働しやすい環境づくり」を提供できるかが重要になってきている。そこには、もちろん女性の活躍できる場をきちんと提供することも必要であるし、子育て世代のサポートやシニア世代の就業継続等についても、今まで以上に日本国内において積極的に取り組んで行かなければならない方策はたくさんある。

 

ただ一方で、「そもそも多様な人が協働することは組織に何をもたらすのか?」「多様な人が協働する組織ではどのようなマネジメントが有効か?」といった、企業にとって重要なダイバーシティ・マネジメントに関するエビデンスについては、欧米に比べ、日本の中ではまだまだ明確な結論といったものが示されていなかった。

このため、この本では特に性別にフォーカスを当てながら、日本の企業などで働く人達に様々なアンケート調査を行い、学術的な統計解析を行い、日本型の「ダイバーシティ・マネジメント」とはどの様な特徴があり、どうすればこの様な風土醸成ができるかを探っていった結果が示されている。

 

その具体的な実践的示唆が2つなされている。

まずは、当たり前のようだが、各会社によってかなり事情が違っているということである。それは、日本の中で「職場におけるダイバーシティ」は、今まさに過渡期にいるということが伺える。例えば、外資系企業やグローバル企業では、日本国内であっても女性役員数が増え、ダイバーシティの風土はかなり確立されていたりする。しかし一方で、未だに男女機会均等でなかったり、男女の意識の平等さの低い、日本特有の年功序列の体質が強い企業もまだまだ存在する。

 

このため、アメリカで得られた結果の「直輸入」には弊害もあるということ。

確かに、海外で実証されたインクルージョンの重要性が日本でも有効な企業はある。

インクルージョン(inclusion)とは、直訳すると包括・包含という意味となるが、包括は全体をまとめること、包含は包み込む・中に含むことを指すようだ。ビジネスに当てはめると企業内すべての従業員が仕事に参画する機会を持ち、それぞれの経験や能力、考え方が認められ活かされている状態とのこと。

先程の外資系企業やグローバル企業では、今さら「男女平等」を唱える施策をうっても職場内は白けてしまうだけである。

一方で、いわゆる日本的体質が強い企業においては、女性のモチベーションや情緒的コミットメントが男性に比べて低い調査結果も出ている。そういった企業で、いきなり男女を等しく処遇し、平等な関与を求めると、かえって既存の強い性差や性役割分業の存在と競合し、両者の協働を難しくすることがあるとのこと。従って、かなり丁寧に初歩的なダイバーシティ・マネジメントを行っていく必要があるとも考察している。

 

令和の時代は、ダイバーシティやSDGsがかなり強く求められる時代になってきているが、実際には企業や組織によって進展具合はまちまちであるため、その状態・レベルにあったオーダーメイドな対策を取っていくことが、企業や組織の発展・イメージアップのためには大切であるということが、学術的にも分かってきたということであろう。