「臨床・研究で活用できる! QOL評価マニュアル」(下妻晃二郎 監修,能登 真一 編集;医学書院 2023)を読んだ。
僕の論文も引用されるという連絡を出版社からいただいたことがきっかけで、読ましていただいたのだが、実はこの本がスゴかった!
何が凄いかというと、世の中には医学系においても様々なQOL尺度があるわけだが、そのそれぞれについて、尺度の特徴や測定特性などの解説が丁寧にされており、最新のエビデンスもきちんと示されている。さらに日本語版があるのか、その利用方法はどのようにすればよいのかなど、知りたい情報がしっかりと押さえられている。
そして、SF-36 (Medical Outcome Study:MOS 36-Item Short-Form Health Survey)やEQ-5D(EuroQol 5-dimensions)といった有名な尺度から、DQOL( Diabetes Quality of Life)やPSQI((pittsburgh sleep quality index)といった各疾患で用いられる尺度まで幅広く、30以上の尺度が紹介されている。
序論で編集者も書かれているが、2001年に医学書院から「臨床のためのQOL評価ハンドブック」というサイズの大きな本が出版されていたが、「国内でQOLを学ぼうとする人たちにとってのバイブル的存在」であった。僕自身も、まさにこの本を頼りに当時QOLについて学び、医局の仲間たちと一緒にDQOLの日本語版作成に苦心惨憺していたことが思い出される。
当時、今回の「臨床・研究で活用できる! QOL評価マニュアル」といった本があれば、どんなに助かったことかと思われる。そう思わせてくれるくらい、非常によくまとまっている。
是非、多くの人に活用してもらえればと思う。そして、QOLだけでなく、その周辺の尺度についても、同様によくまとまった本が出版されることを期待したい。
蛇足ではありますが、「各論Chapter5 疾患・病態特異的尺度(世代特異的尺度を含む)」の
「6. DQOL (Diabetes Quality of Life) 浅尾啓子 著」 のセクションに僕の大学病院勤務時代の論文
Sato F, et al.: Reliability and validity of the Japanese version of the Diabetes Quality-Of-Life questionnaire for Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. Diabetol Int 5, pages 21–29, (2014)
を引用してもらいました。さらに、逆翻訳などのプロセスを含め、精密に翻訳されていることが評価され、我々が行ったDQOLの日本語版についても、その原文が紹介されています。
しっかり論理立てて書かれているにもかかわらず、非常に分かりやすく、的確にまとまっている内容となっています。ご紹介いただき、誠に感謝申し上げます。