News・Blog

聖路加国際病院副院長の百枝幹雄先生のお話しを聴くことができた。百枝先生は女性総合診療部部長で、

「パフォーマンス向上のための月経マネジメントとその費用対効果」というタイトルでお話しをされた。

 

非常に印象的だったのは、「働く女性の健康問題」に絡めて、女性のプレゼンティーズム等の生産性に関するデータをご紹介されていたことだ(Tanaka E, et al.; J Med Econ 2013;16(11):1255-66)。

これによると、月経関連症状の経済的負担の71.9%(約4911億円)が「労働損失」とのこと。一方で、通院費用や市販薬費用は合わせても残り28.1%(約19171億円)であったとのこと。こういった生産性についてのデータは、経営者達に意識してもらう上で、最も効果的なのではないかと思う。

 

百枝先生は、子宮内膜症啓発会議を設立し実行委員長をされるなど、子宮内膜症の専門家で、この治療方法について、分かりやすく教えていただいた。

子宮内膜症と診断された時に「妊娠の可能性は残したいけれど、当分はその予定がない」あるいは「妊娠の希望はないが手術は避けたい」という場合には、薬物療法を考慮する。薬物療法には「対症療法」と「ホルモン療法」がある。

対症療法として処方される鎮痛剤は、痛みの原因となるプロスタグランディンの分泌を抑える薬である。痛みがピークに達してから使用するよりも、痛みがひどくなる前(月経開始前)からの服用のほうが効果は高いため、結果的に薬の使用量も最小限に抑えることができる。対症療法で十分な効果が得られない場合、あるいは明らかな子宮内膜症病巣が存在する場合には、ホルモン療法を行う。

ホルモン療法には大まかに「偽妊娠療法」と「偽閉経療法」の2つがある。

「偽妊娠療法」は、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬あるいはプロゲスチン製剤を用いて、黄体ホルモン(プロゲステロン)による子宮内膜症の抑制を図る治療法。「偽閉経療法」は、GnRHアナログ製剤によって人工的に閉経状態をつくり、卵胞ホルモン(エストロゲン)を減らすことによって子宮内膜症の抑制を図る治療法である。

「偽妊娠療法」では、まずはホルモン量も副作用も少ない低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(いわゆるピル)を使用。排卵と子宮内膜の増殖を抑えるため、月経量が減って月経痛が軽減される。また、ピルはもともと避妊薬であるため、女性の症状コントロールに適している。プロゲスチン製剤は選択肢が広がっており、子宮内膜症病変に直接働きかける作用のある製剤も。服用中に不正出血が起こりがちではあるが、疼痛改善や病巣萎縮効果についてはピルよりも強力である。

「偽閉経療法」に用いるGnRHアゴニストは通常6ヶ月間続けて使用するが、人工的に閉経状態をつくるために、更年期様症状(のぼせ、ほてり、肩こり、発汗、頭痛など)の副作用がある。有効性は高いが長期間連続して使えないため、偽妊娠療法では効果が不十な場合や、手術前や閉経前などに用いることが多い。

日本では、まだまだ保険適応になっている、いわゆるピルによる治療は認知度が低いかもしれない。しかし、働く女性で「妊娠の可能性は残したいけれど、当分はその予定がない」という人には非常に有用な治療であると言えるのではないだろうか。

また、このような情報を、一般の女性に広く入手しやすいように、百枝先生らは、日本子宮内膜症啓発会議(通称:JECIE)を設立された。このJECIE(http://www.jecie.jp/)は、女性関連学会・啓発団体・企業・メディアが一体となって女性の健やかな一生のために様々な手法を交え、月経困難症や子宮内膜症に関する啓発活動を行い、全ての女性が産科・婦人科へ行きやすい環境づくりを目指し活動しているとのこと。実際に見てみると、非常に多くの情報を得ることができるので、是非有効に活用していきたいと思う。