「はじめてのカーボカウント 第4版」を読んで

「はじめてのカーボカウント 第4版」(坂根直樹・佐野喜子 編著:中外医学社2022)を読んだ。

2009年に初版が出て、今年第4版となった。

そもそも「カーボカウント」とは、糖尿病治療において、食事中の炭水化物量を計算して食事管理に利用するという食事指導の方法の一つである。特に、瘦せ型の1型糖尿病患者においては、インスリン注射に合わせて食事を摂るのではなく、「食事に合わせてインスリン注射をする」という考え方である。これにより、格段に食事の自由度が高くなり、普通の人達と同じような食事をしながら血糖コントロールができるようになる。

まずは、糖質がどんな食品に含まれているかを確認し、さらに、自分が食事で採っている糖質量を確認し、それに見合ったインスリン量がどの程度なのかを把握できるようにしていく。

これができるようになってくると、例えば間食でスイーツ等の甘いものを食べる時でも、インスリンを何単位注射すればよいかが、自分で概算できるようになり、間食の度に血糖値が急上昇するといったことを防ぐことができる。

ただ一方で、好きなだけ甘いものを食べて、その分、どんどんインスリン注射を追加していけば、やはり体重が増えていってしまう。このため、適正な1日のエネルギー摂取量と糖質量を理解し、食事全体として、栄養素のバランスが保てているか等も配慮しながら、体重管理も行っていくこととなる。

 

ここまで書いただけでも、特に普段料理をしない人にとってはかなりハードルが高いかもしれない。実際に多くの糖尿病患者さん達は、かなりのトライ&エラーを重ね、管理栄養士や主治医と相談しながら、本当に大変な思いをしてこういった食事管理を習得されている。

そのために、非常に分かりやすく、初級編の教科書的存在で書かれている本が、この「はじめてのカーボカウント 第4版」である。

坂根先生自身は、日本糖尿病学会の中でも、こういった分かりやすく患者さんに説明をする本を数多く出版され、本当に日本全国の糖尿患者さんの身近なサポート役を長年されている。本当に尊敬する糖尿病医の一人である。

実は、僕の高校の先輩でもあり、今までも何度も直接お会いして、色々なことを話す機会があった。非常に穏やかで、いつもニコニコされておられ、昔から本当に「心理的安全性」の高い先生だ。

 

一般の方がこの本を手に取ることは、基本的に無いと思うが、ただ単に食事を摂る時にも、糖尿病の方々は様々に配慮しながら、日々病気と向き合って生活をしているということは、是非、知っておいていただきたい。

そして、世の中あらゆるものが物価高となっている中、唯一値上がりしていないのが「日本のお米」である。地産地消といった環境にも優しい食材を、今こそ上手に活用して、日々の血糖コントロールにも繋げていってもらえればと思う。