「チームワークの教科書」を読んで

「チームワークの教科書」(Harvard Business Review チームワーク論文Best 10:ダイヤモンド社;2019)を読んだ。

 

この本は、Harvard Business Review誌の掲載論文から、この誌の編集部が「チームワークについて知るべき最低限のこと」として厳選された10本の論文を集めたものだそうだ。

今や、仕事で成果を出そうとすると、チームの力が欠かせない。しかし、そこには多様性が求められたり、激動の時代変化や国際化の波が否応なくあったりする。

 

そもそも「チームとは、共通の目的、達成すべき目標、そのためのアプローチを共有し、連帯責任を果たせる補完的なスキルを備えた少人数の集合体」であるとされ、研究者が長年、様々なチームを観察し、膨大なデータを解析したところ、チームの成果を左右するのは、メンバーの資質よりも「コミュニケーションの特性」であるとのこと。そこで浮かび上がってきたキーワードは、「熱量」「関与」「探索」の3つの要素。これは、ほぼ共通しているらしい。

好業績チームでは、「チーム全員が平等に話したり聞いたりする機会がある」「メンバー同士が顔を向き合わせてコミュニケーションをし、会話や身振りに熱量がある」「チーム外の情報を持ち帰ってくる」などといったことがポイントとして挙げられている。

「たえず新しい視点を吸収しようと努める」ことも極めて高い成果を上げる上では大切だと強調している。

 

また、チームの創造的なパフォーマンスを高めるためには、「チームメンバーが日々の仕事を有意義だと実感できるように促す」ことがマネジャーの役割だとも指摘。このため、「人間関係重視と任務遂行重視の姿勢を兼ね備えたリーダーがいるチーム」が最も生産性かつ革新的なチームであったとのこと。最初のうちは「目標を掲げ」た上で、任務について話し合ったり、一人ひとりの責任を具体化し、「任務重視のリーダーシップ」を用いるが、「チームの目標や各メンバーの責任が明確になった時期」からは、「人間関係重視のリーダーシップ」に切り替えるとのこと。一方で、最初から最後までリーダーシップのスタイルを変えなかったリーダーが率いるチームでは、必ずと言ってよいほど長期的には業績が下がっていたそうだ。

そしてさらに、異端者のいるチームの方が、高い成果を上げており、この異端の思考は「素晴らしいイノベーションの源である」ことや、「所属するマネジメントチーム内の意思決定が公正だと信じているマネジャーは、決定事項に同意しない場合であっても、憤慨せずに決定を受け入れている」といったことなどを本書では紹介されている。

 

また、「チームづくりの5条件」(J.リチャード・ハックマン著:ハーバードで学ぶ「デキるチーム」5つの条件)が紹介されており、その1つに「チームには、専門のコーチングが必要である」が挙げられている。そこには、エグゼクティブ・コーチングに加えて、チームコーチングの必要性も述べられている。

 

他にも、様々な重要なポイントが挙げられているが、この様に、組織を運営していく上で、「コミュニケーション」が重要であることが、エビデンスを持って証明されてきていることを、我々はもっと自覚し、普段の業務の中に、今まで以上にこういった要素を積極的に活用することが必要なのではないかと感じる。