「デジタルヘルス事業参入の法務」を読んで

「デジタルヘルス事業参入の法務」(落合 孝文、松倉 香純、平井 健斗、松田 一星 著:中央経済社 2022)を読んだ。

特に、自分が積極的に何かデジタルヘルス事業を立ち上げるという訳ではないのだが、ヘルスアプリ等を活用する場面はしばしばある。そこでこの本に興味を持ったのだが、著者をみるとすべて弁護士の先生方というのも、今までにあまり無い本で非常に興味深いと思った。

 

コロナ前の頃、ヘルスアプリを作ってみましたとか、AIで何かしら医療関連の事業を立ち上げようとしていますといったことを言われる人や企業を少なからず見かけた。しかしながら、現在も順調に上手くいっているデジタルヘルス関連事業はかなり少ないように感じる。

確かに技術だけでいえば、そういった分野の方であれば、簡単にアプリを作れたり、AIを活用することはできるのかもしれない。しかしながら、医学的な監修が必要だったり、この本の中にあるような業界特有の規制に隅々まで対応しきれなかった場合も多いのではないだろうか。

だからこそ、こういった分野に明るい弁護士さん達が、こうした法務にまつわる本を書かれたのかもしれない。

 

読んでいて、個人情報保護法などにしても、これまでの歴史的な経緯も説明しながら、様々な留意点を踏まえて的確に解説されている。さらにサイバー攻撃による事故に関する対応や、遺伝子情報利用目的の厳密な特定など、避けては通れない法規制について、分かりやすくポイントを示して書かれてある。

他にも、医師法や医療法などで守られている医療行為の規制範囲についてや、オンライン診療指針のガイドラインなども紹介されており、法令遵守していないビジネスモデルは成立しないことへの注意喚起も行っている。

 

さらに、今年大変な問題になっている保健機能食品における必要表示事項や表示・広告規制など、各法に抵触しない用に慎重な検討が必要であるとも述べられている。

 

ネガティブな話ばかり書いてしまったが、こうした法令遵守を行った上で、本当に志がある人や企業には、医師・医療と上手に連携しながら、積極的にデジタルヘルス事業に参入してきてほしいとも思う。

そして、ヘルスケア事業に携わっている関係者であれば、時にはこうした法務に関する本を読んで、正確で最新の法律的情報を得て、頭の整理をしておくことは大切なのではないだろうか。