医療機関においても「心理的安全性」が組織へのコミットメントや、患者の安全に関連しており、安全な医療を提供できると感じ、仕事にエンゲージし続けやすくなる「ワークエンゲージメント」が無ければ、離職する者が出てくる。そして、離職者が増えていけば、採用と未熟なスタッフへのトレーニングにコストがかかる。
離職者数を予測するためには、従業員満足度調査は重要だが、十分ではない。その理由として、従業員満足度は仕事への感情的コミットメントを表してはいないからだと述べられている。
一方で、ある都会の大病院での医療スタッフを対象とした調査によると、「心理的安全性」が「組織へのコミットメント」および「患者の安全」にも関連していることが突き止められた。さらに著者は、「従業員が問題について安心して話せる職場環境は、医療においては特に重要」だと強調している。
最後に、「心理的安全性の土台のつくり方」として、失敗が起こった場合に、まずは失敗を報告することを恐れることが無いように、リーダーは、現場で働く(医療)スタッフ全員に率直な発言をしてもらえるような仕組みをデザインすることが大切であるとしている。
そのためには、リーダーはスタッフ全員から発言を引き出す問いを行うことが必要である。そして、発言してくれた勇気に対して、常に感謝の言葉をかける必要がある。
さらに、失敗を恥ずかしいものではないとして発言を促し、それにより分かってきたデータ等から、その失敗の種類を分類し、今後失敗を回避するためのリフレーミングを行っていく。
ここまで来て、勘のいい人であれば、僕が何を言いたいかが分かるであろう。
まさしく、心理的安全性を高めるためには、その土台としてコーチングやコーチング・スキルがあるということが前提となっているのだ。アメリカでは、今さら当たり前すぎて、そうしたことも強調されることもなくなってきているぐらい、文化として浸透しているということであろう。
実際に、著者はこうもコメントしている「今日のリーダーが最高の仕事をするよう人々の意欲を高めるためには、人々の情熱をかき立て、コーチングし、フィードバックを与え、さらに、秀逸であることにやりがいを感じられるようにしなければならない。… 難題や懸念やチャンスについて安心して話し合える環境を作ることが、リーダーの特に重要な責任なのだ」。
是非、多くの働く方々に読んでもらいたい名著だと思う。