「産業医の実務 はじめの一歩 「一社目の壁」を越える」(西埜植 規秀、産業医学振興財団2025)を読んだ。
著者は、日本産業衛生学会専門医・指導医で、もちろん労働衛生コンサルタントも持っており、まさに産業医スペシャリストだ。実は15年以上前からの知り合いでもある。そして、僕が独立する時にも個人的に相談にのってもらったり、大変お世話になった先生だ。
実は、医師が産業医の仕事を行っていくにあたり、ある意味、初めて産業医業務を始める時が最も大変だと言えなくもない。これを業界では「一社目の壁」と呼んでいる。
企業としては、産業医未経験の医師よりも、やはり経験豊富な産業医を希望するということは、想像に難くない。
このため今回、著者は産業医学振興財団とタッグを組み、「1社目の壁」を克服するためにはどのようにすればよいのかを、非常に分かりやすく、ポイントを押さえてまとめられたのがこの一冊である。
僕自身も、独立する時に相談させてもらったような、産業医経験が豊富で非常に親切な先生だからこそ、このような本を書くには、まさにうってつけの人材だと言える。
本書に書かれている内容の通り、契約から面談・職場巡視・安全衛生委員会のことまで幅広く、こうした手順を順々に地道に行っていくことが非常に大切だということが、実感もこもった形で分かりやすく書かれている。
産業医をしていても、実際どのようにすればよいか、なかなか教えてもらう機会が少ない方も多いと思う。そうした場合に、こうしたオーソドックスな手順を知っておくことは、大変役立つと言えるであろう。
現に、地域で産業医をお願いされる臨床医の先生方も多い。日本医師会推薦でもあり、こうした先生方には、是非、手元に置いておいていただきたい一冊である。