今月のさんぽ会では、「HIV感染症の今」というタイトルで、順天堂大学総合診療科教授の内藤俊夫先生のご講演を聴かせていただいた。
内藤先生は、僕が研修医時代に総合診療科をラウンドさせていただいた時のグループ長で、当時お世話になっていた先生の一人である。その頃の総合診療科の医局員メンバーは内藤先生をはじめ、みんなかなり若く、非常に和気あいあいとした楽しい雰囲気だった。そして、総合診療科特有の鑑別疾患について、本当に内藤先生は何でもよく知っておられ、みんなで他愛無いバカ話をしながらも、凄い人だなと思っていた。
現在は、HIV/AIDSのスペシャリストとして活躍されておられ、普段なかなかこの分野の講演会を聴く機会がないため、大変貴重な機会であった。
実際に講演内容を聴くにつれて、自分自身の知識不足を痛感した。
HIV感染とAIDSの違い、その予後の違い、注意すべき感染経路、そして、HIV感染者が出産する場合、どの様にすれば、子供が感染せずに済むのかといった細かな点について、非常に分かりやすく教えていただいた。このため、大変勉強になった。
また、最近はダイバーシティやLGBTについて関心が高まっている。しかし、HIV感染とどの様に関連しているのかいないのか等、知らないことも多々あった。
やはり、男性間での感染が多いのは間違いないようで、最近はMSM(Men who have sex with men)と呼ばれているとのこと。国立感染症研究所のHPでは、厚生労働省がMSMへのエイズ対策を促進するために、CBO(Community Based Organization)の啓発活動拠点として「コミュニティセンター」を、全国6か所で設置していることを紹介している。
そして、かつてはHIV治療と言えば、カクテル療法等と言われ、何種類もの薬を何通りもの服用の仕方で内服しなくてはならず、非常に日々の内服管理をするだけでも難しいという印象であった。しかし、今回、その点について質問してみたところ、現在は1日1錠内服だけでよいとのこと。そして、早期発見・早期治療を行えば、予後も非常によいとのことであった。
ただ一方で、極めてデリケートな問題も、まだまだ残っていることも事実である。特に、家族に感染していることを正直に話しするべきか否か、会社や産業医に話しはした方がよいのか…。実際には、家族にさえなかなか話しすることができないという深刻な状況なことも少なくないとのこと。
また、抗HIV薬は1錠6千円程だそうで、これを数十年飲み続けると、診察料や検査料を含めると1億円以上の医療費がかかってしまうとのこと。
そういった意味でも、新たな感染者を出さないことが極めて大切であることもお話しされていた。
また、これらの患者さんの最近の問題点としては、生活習慣病の合併が多いそうだ(J Infect Chemother;25(2)89-95,2019 )。こういったことを知る上でも、どんどん糖尿病医としても、最新情報をキャッチアップしていく必要があることを、改めて感じさせられた。