臨床の現場でコーチングを活用しようとするにあたり、「聴く」「質問する」ということを率先して行っていく反面、ある程度医学的な情報もお伝えする必要も出てきます。「聴く」「質問する」ということを心がけながら、こうした情報提供をどの様に上手に行って、患者さんに納得感を持ってもらえるようにするのかは、皆さんも非常に悩ましいと感じることがあるのではないでしょうか。
先日、私はプレゼンテーションのレッスンを受ける機会がありました。この時に、体重管理の重要性についてプレゼンテーションしたところ、一緒に受講していた一般社会人の方々からいただいたフィードバックのほとんどが「医学的エビデンス(ファクト)が多すぎて、正直少し頭に入ってきにくい」という結果でした。さらに、「できればファクトとストーリーが半々くらいの割り合いで話してもらえると、聞き手としては聞きやすい」との感想も多く、これは、まさにプレゼンテーションの講義で教わった内容と一致していました。
医療業界ではない一般社会人の方々からのフィードバックでしたので、これはまさに「日常の多くの患者さん達にとっては、医者が説明している、圧倒的に医学的エビデンス(ファクト)の内容が多く、ストーリーなどほとんど無いような説明の仕方は、なかなか理解が難しい」ということになってしまいます…。
実に、医療者としては非常に耳が痛いフィードバックでした。
そうであるならば、特に糖尿病・生活習慣病等といった慢性疾患の診療を行っている医療者としては、いかにストーリーを織り込んで話すことができるかが、我々医療者が思っている以上に重要なポイントになっているのかもしれません。
こうした課題をクリアしていくためには、我々医療者は、例えば「その方の仕事や家族、その方の将来」などといった「その方のストーリー」をできる限り織り交ぜて対話するということを、もっと意識して話を組み立てていくことが大切だと言えるのではないでしょうか。
我々医療者にとって、「ストーリーを織り込んで話すこと」というのは、少なくともしばらくは不慣れで、とても話しにくいと感じるかもしれません。しかしながら、自分自身のコミュニケーションの引き出しを増やすといった観点からも、是非、チャレンジしていく価値はあるのかもしれません。皆さんも、一度トライしてみてはいかがでしょうか?
 
          
     