医療・介護職の給与と、健康保険組合の事業経営との関係

今月、福岡で開催された医療マネジメント学会に参加した。

大会長特別企画として「地域医療構想の今後」というシンポジウム・セッションがあったので聴講してきた。300人は入るような会場であったが、超満員で立ち見の方々も大勢おられた。

 

様々な分野の先生方がご講演されている中で、繰り返し話題になっていたのは、超高齢化社会になり、しかもその高齢者人口も減り始めている地域も珍しくなくなってきているということであった。そういった影響をもろに受け、多くの病院でベッド数を減らす決断をされ始めている。

これに伴い、病院の統廃合も行われ、地域においていよいよ医療再編が現実の話になってきていることを知った。そして、会場にいた多くの聴講者が、日本の医療の差し迫っている危機感を強く感じたと思う。

 

非常に印象的であったのは、入院患者が減ったりすることによる経営的な問題もさることながら、多くの先生方が、人的問題が深刻だと話されていた。

 

そして、最後に座長の先生が、「物価高騰の煽りを受け、人件費も高騰しているなかで、診療報酬は増やしてもらえない状況が続いている。世の中では、従業員の給与が5%程度上昇してきているようだが、医療・介護職の給与は2%程度しか上がっていない。診療報酬の増額を我々は望んでいるが、そのためには、保険者に保険料率を挙げてもらう必要がある。しかしながら、国はそのことについては強く言えない状況が続いている。これでは、ますます医療・介護職の離職が顕著になってしまい、持続可能な医療・介護の提供が非常に困難な状況に陥ってしまう」と嘆いておられた。その気持ちは、会場にいた多くの方が同じ思いであったのではないだろうか。

 

翻って、保険組合を見てみると、なかなか財政的な運営が上手くいっていない。これでは、確かに国も簡単に保険料率を今以上に上げろとは非常に言いにくいのであろう。

病院や介護施設で多くの医療・介護職が働き続けるためには、健保運営も健全化していく必要があるということが、僕の中で初めて結びついた。

そう言った意味でも、健保におけるハイリスクアプローチをより積極的に行い、少しでも医療費削減につなげ、予防医療の分野で医療機関と健保・企業が直接連携できる仕組みを作っていくことも急務であるなと感じた。明日から、こういったビジョンも持って、病院側にも健保側にもより積極的に働きかけていけたらと強く思う。