「啐啄同時」
これは、禅の言葉です。
鶏の雛が卵から産まれ出ようとするとき、殻の中から卵の殻をつついて音を立てることを「啐」と言いいます。
そのとき同時に親鳥が外から殻をついばんで破ることを「啄」と言いいます。
この「啐」と「啄」が同時になってはじめて、殻が破れて雛が産まれてくるのです。
雛が無事に卵から産まれ、成育していくためには、「啐」と「啄」のタイミングが絶妙に行われる必要があるように、
健康増進においても、企業やその社員がやる気になった時に、
そのタイミングで我々医療者の専門的な知識に基づいた的確なサポートが上手く手を差し伸べられることが、大変重要ではないかと考えております。
実は、この言葉、たまたまNHKのテレビ番組【プロフェショナル】を見ていた時に、たしか九州の公立小学校の先生が取り上げられており、その先生が仰っていた言葉になります。非常に良い言葉だなと、私の心に響いたのを覚えております。
このテレビを見ていた当時、私は、担任赴任先の伊豆の病院で、糖尿病支援入院に力を入れておりました。
色々な理由で、なかなか入院されることがなかった糖尿病患者さんが、何かの縁で、やっと入院されることにより、糖尿病としっかり向き合う様になり、中には劇的に改善される方も少なからずおられました。
主治医として、毎週毎週こうした患者さんを診させていただく毎に、ある意味ご縁を感じるところがありました。その時に、この「啐啄同時」の言葉と出会いました。生活習慣病の改善を行っていくためには、この言葉の様に患者さん・対象者の方々が上手くやる気になるタイミングを作れる様、我々は日々努力し、そして、このタイミングを逃さない様にし、そのタイミングがやってきた場合は、心が通う様にお話ししながら、その患者さん・対象者の方のやる気をできる限り一気に引き出せるようにコミュニケーションを取っていくことが大切なのではないかと考えております。
「言うは易く行うは難し」で、実際にはなかなか上手くいかないことも数多くありますが、今後も自分なりに微弱ながらでも頑張っていきたいと思っております。