学会に参加して 2023年9月 AIと働き方改革

今月は、日本産業保健法学会という学会が都内であり、現地参加してきた。

僕も一応、この学会員で、この学会が認定している「産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)」という資格を持っている。このため、その資格維持のためにも参加せざるを得ないという事情もあった。

 

ただ、この学会は産業保健の先生方に加え、弁護士の先生方も多数参加されているので、普段聞けないような労働安全に関する法律の話や労働災害関連の裁判判例の話などが聴けて、大変勉強になる。

 

今回も、産業保健に関する行政の動向について、厚生労働省の方が直々に講演され、今後の化学物質の自律的管理や健康情報の取り扱いなどの法的責任等についての話があった。

 

さらに、これからはAIが我々の日常業務にどんどん取り入れられることにより、産業保健の立場からみて、どんなことが課題になるかといった未来に向けての議論もされていた。

 

その関連で、少し産業保健法学会の内容からは外れるかもしれないが、招待講演として慶應義塾大学経済学部経済研究所の山本勲教授が「AI時代の労働生産性」と題して、講演されていた。ITの発達により、ルーティン化された業務がITで代用されて来た中で、さらにAIの発展により、非ルーティン的な業務さえもAIが代用できるようになっていくとのこと。このため、ルーティン業務を担ってきた職種の人達には、やはりリスキリングが必要であると強調されていた。また、日本において、海外勢に負けないような創造性の高い仕事を行っていくためには、経営層・マネージャー層・現場におけるAIリテラシーの低さがあることにより、「人とAIの協働」が行えないため、特に現場において、AIがきちんと使いこなせる人が必要であるとも話されていた。さらに、AIを上手に活用することは、長時間労働を解消することにもつながり、働き方や労働生産性を上げることにも役立つとのこと。

非常に興味深い内容のお話だったので、講演後、少し質問をさせていただいた。医療機関において、このような長時間労働解消のためのAI活用は、残念ながら未だほとんど報告されていないそうだ。できれば、少しずつでも医療機関内で長時間労働解消のためにAIを利用してもらって、こういった関連の事例を集めていくことができれば、それらの結果を基にAIに学習してもらい、さらに効果的な活用方法が見いだせていけると思うと話されていた。そういった意味でも、多くの医療機関において、こういった未来に向けたAI活用を広めていくことが、結果的に「医師の働き方改革」のブレイクスルーになっていくのかもしれないと強く思った。