この季節の月曜日の朝、テレビをつけると例年マスターズの最終日が行われている。
やはり、タイガーウッズ全盛期の時に、スーパーショットを連発するタイガーには、目を奪われたものである。ただ、その圧倒的な姿を見て、多くの日本人ゴルファーが、いつかこのマスターズで日本人が優勝する時はくるのだろうかと、ちょっと悔しい思いをしながら観ていたと思う。
最近の松山英樹は、3日目くらいになるとすでに上位から脱落してしまっていることが多く、やはり海外で活躍することの難しさを、否応なしに見せつけられていた。
それが今回、3日目になってもトップを維持。否が応でも期待が膨らむ。
しかし、僕も関西人。ちょっと期待して、最後は優勝できない阪神タイガースの悔しさを今まで何度も経験してきた。
このため、過度な期待は禁物と思っていた。
ただ、月曜日の朝起きて、テレビをつけると14番ホール終了時点で4打差をつけ首位キープ。思わずそこからテレビ画面に釘付けになってしまった。
結果的には、最終日スコアを落としての1打差。お世辞にも、タイガーウッズのような圧倒的なカッコいい優勝では無かった。
そうは言っても、これまでの長い歴史の中で、このような地味な勝ち方でもリードしている立場で最終ホールをラウンドできた日本人はいなかった訳で、ある意味、これこそが凄いことである。
その最終ホールも、セカンドショットはグリーンを外しバンカー。最終組を迎えるギャラリーがスタンディングオベーションをしてくれたが、ちょっとそれも様になりにくかった。
それでも、最後のパットを難なく入れて優勝。
松山選手自身も、勝利の歓喜というよりは、この途轍もなく厳しいプレッシャーの中、しっかり勝ち切ることができたという、やっと重圧から解放されたホッとした表情が印象的であった。
そして、そのまま祝福されてホールを後にしていく姿には、こみ上げてくるものもあったようだった。
解説の中島輝幸氏も泣いている。アナウンサーすら涙声。
僕自身も、「しんみり」としたじわじわと喜びがこみ上げてきた。
もちろん僕自身、普段ゴルフをするわけではなく、ちょこちょこゴルフの実況中継を見る程度のファンであるが、それでも子供の頃から、このマスターズで日本人が優勝することの凄さや大変さのレベル感は何となく分かっていた。
そして、優勝直後の実況中継を見ていて、これは日本中の男たちがテレビを見ながら涙しているのではないかと感じた。
様々なスポーツで、日本人が活躍している時代。そうは言っても、メジャースポーツで、特にアメリカで人気のあるスポーツのメインの大会で優勝するということは、途轍もない挑戦である。
しかも、半世紀近く、挑戦し続けて、日本のトップ選手たちが跳ねのけられてきた大会での見事な優勝。
少なからず、みんながその苦労を思い出しながら、日本人が勝ったんだという感慨に浸ったのではないだろうか。
後日、テレビを見ていたら、ビートたけしが「本当なら優勝パレードを銀座ででも行うレベルなのに、コロナ禍で全く出来そうにない。このコロナが恨めしい」と言っていた。本当にそうだと思う。
そうは言っても、是非、コロナが落ち着いた頃に、銀座での優勝パレードを見たいものだと、つい想像してしまう。