ご報告が遅くなりましたが、9月21日に日本産業保健法学会学術集会のシンポジウム9「医師の働き方改革を前向きな取り組みにさせていくためには ~現場から見えてくることを通じて~」が無事終わりました。今回は、大変有り難いことに座長として関わらせていただきました。
産業保健法学会の中で、「医師の働き方改革」というテーマは、毎年聴講者がなかなか集まらないことは、如何ともし難いところがあります。しかしながら、実際のシンポジウムの内容は、我々の想定以上に盛り上がった感があります。
最初は、医療法人財団愛慈会 相和病院 病院長の堤健先生の「医療現場からみた医師の働き方改革の現実と展望」というタイトルのご講演。病院長でありながら、今でも大学病院の救急科で診療もしておられ、産業医活動もされているところから、この三足の草鞋を履いているからこそ見えてくる、「医師の働き方改革」についての様々な角度からの視点をお話しいただきました。
特に近年は、人件費や物価高による資材高騰など大幅なコスト増の中で医師・看護師不足も慢性的にあるため、ナースプラクティショナーを含めた人材活用によるタスクシフトやIT関連の活用の重要性などを、現場目線でお話しされました。
次に「医師の働き方改革」関連法案の作成に携わってこられた早稲田大学名誉教授の島田陽一先生からは、「医師の働き方改革」関連法案が決められた経緯と、その法令順守の必要性について。特に年間1850時間の残業時間は、あくまでも暫定措置であって、2035年には980時間まで削減していく必要性を、改めて強調。そして、今こそ勤務環境改善マネジメントシステムを有効活用していくべきだとも強調されました。
さらに、株式会社日本産業医支援機構の佐藤典久社長からは、2024年4月から病院向けに提供している、自社開発された長時間労働面接対象医師と面接指導実施医師とのマッチング作業「おまかせくん」https://mensetsuomakasekun.com/を運用されている。実際に面接マッチング数が多い診療科は、1位産婦人科、2位心臓血管外科、3位小児科と、やはり一般的に極めて忙しいとされている診療科であることを報告されました。
こうした現状を改善していくためには、産業医を本質的に活用できる体制づくりを真剣に検討していくことが、こうした診療科の先生方の働き方改革へのサポート支援に繋がっていくのではないかと問題提起もされました。
質疑応答の中でも、経営者はこうした結果を真摯に受け止めて、医療者の安全配慮を十分に考慮するためにも、衛生委員会なども大いに活用して、病院における働き方改革をさらに前向きに進めていく必要があるのではないかといった活発なディスカッションがなされました。