今年の桜は非常に長く満開の状態が続いている。
しかし、それを知ってか知らずか、話題にする人が非常に少ない印象である。
もちろん、それは新型コロナウイルス感染症のため、東京近郊では花見も徹底的に自粛となっているからに他ならない。そういった意味では、話題にするのが憚られる雰囲気になっているというのが、正確なのかもしれない。
今年はこの時期に、たまたま市ヶ谷-四谷付近のお濠の辺りや、日本橋-八重洲周辺などを日中に移動していることもあるので、静かに咲き誇っている満開の桜を随所に見かけることが多い。
しかし、例年と違って、立ち止まってゆっくり桜を眺めている人をあまり見かけない気がする。それは、やはり外国人観光客をほとんど全く見かけないことも、桜の木を写真に収めたりするといった光景を見かけないことの、大きな理由かもしれない。それだけでなく、とにかく東京都心部にも拘わらず、極めて人通りが非常に少なく、本当に閑散としている。
そうすると、桜の木の傍を通り過ぎる度に、そういうことがより一層気になってしまう。
こういった光景は、桜にとっても、我々にとっても、本当にお互いに気の毒な状態と言える。
そして、気のせいか、今年の桜の花は例年よりもピンクが薄く、白さが際立っているような気がする。
それは、僕が今までしっかり桜を眺めてこなかったことによる、ただの無知なだけなのかもしれない。ソメイヨシノなどは、毎年こんな色で咲き誇っていたのかもしれない。
ただ、その白さが際立った花びらが、より寂しさをも際立たせているような気がしてならない。
そして、なかなか散っていかないのは、見向きもされない桜の意地なのであろうか。
このコロナ騒動は、なかなか収束してくれず、むしろこれからさらに深刻さを増すかもしれない可能性すらある。本来であれば春の訪れを告げる華やかなイベントであるだけに、この日本中・世界中が疲弊しているこのご時世、より一層侘しさみたいなものを感じざるを得ない。
今年の桜は、そういった意味で、後々忘れられない風景の一つになりそうだ。