「みみずくは黄昏に飛びたつ」(川上未映子 訊く/村上春樹 語る:新潮文庫;2019)を読んだ。
このタイトルを見ただけで、ピンと来た人はハルキストに違いない!!
僕は、ハルキニストかと思っていたが、調べたらハルキストとのこと。そんな凡庸で、熱狂的なファンとはとても言えないのだが、これまで、結果的にそれなりに村上春樹作品は読んできた。
今回も、2冊目の出版がやっと落ち着いたので、思わず手に取った小説が、「騎士団長殺し(1-4巻);新潮文庫」であった。結局、一気に読み切ってしまった。
確かに、またもや穴の中に入っていく「洞窟スタイル」ありの、村上春樹ワールドが展開していく内容であった。今まで、不思議には感じていたが、今回のインタビューを読んで、なるほどと思うことが多かった。
村上作品を読んでいると、実際、これはどう解釈すればよいのかなどと感じる場面が少なからず出てくる。それは、正直、僕の読解力の無さから出てきた疑問なので、仕方が無いのかとずっと思っていた。しかし、この「みみずくは黄昏に飛びたつ」を読んで、それは、敢えてそうしているのであって、作者自身もよく分からないとのこと。確かに、詳細に取り決めをしていないことも重要なのだと改めて理解し、「ああそうなのか」と非常に納得した。
川上未映子氏は、ご存知の通り、新進気鋭の若手女性作家である。僕も芥川賞受賞作となった「乳と卵」を読んで、見事なストレートパンチを喰らったような衝撃を受けた。その時、正直、少し斜に構えたような一筋縄ではいかない女性という印象を持った。
その川上未映子が、とにかく村上春樹に真正面から喰らいついてインタビューを行っているのが印象的だ。しかも、村上自身が記憶に残っていない(と言っている)、初期の村上春樹作品の中の詳細な人物像や背景を、隅々までしっかり読み込んでインタビューに臨んでいる。その徹底的な読み込み方が、さすが一流作家が本気を出して読み込むとそういう解釈をするのだと、本当に唸らされる。
ただ、その多くに、村上春樹本人が「全く覚えていない」などと返すから驚きである。本当に覚えていないか否かは、僕ら凡人には分からないが、川上氏もかなり戸惑っている様子なので、我々凡人にはその真相(深層)は全く分からない。
特に興味深かったことは、村上春樹が無意識の地下2階説を唱えており、それを意識して小説を書いているということである。「無意識のさらに奥深くを意識する」とは、非常に興味深いし、さすがだと思う。
確かに、そういった感覚を、我々が読んでいて、時折りすごく感じることがある。そこが、ついついまた村上春樹作品を読んでしまう所以なのかもしれない。
たまには、こういった作者の本音を知ることができると、普段、小説を読んでるだけでは分からなかったことも分かり、非常に面白いなと思った。
この本の中で、まだ僕が読んでいない作品の紹介などもされており、さらにそれらも読み加えていきたいなと、つい思ってしまう。(上手に誘導されている…??)