ニコチン貼付薬のみの禁煙外来

先日、日曜日の完全遠隔診療の禁煙外来についてブログで触れた。

 

実は今年、チャンピックスの製造一旦中止といった突発的なアクシデントがあり、このプログラムの参加者全員に対して、ニコチネルTTS貼付薬のみで禁煙外来を行わざるを得なかった。

 

通常、禁煙外来では圧倒的にチャンピックスを処方することが多く、ニコチン置換療法の処方のみで禁煙外来を数多く診察された経験のあるドクターは少なかったのではないだろうか。

僕自身も、ほとんどチャンピックス処方しか経験をしたことが無く、今回はかなり試行錯誤で外来を開始した。

 

正直なところ、ニコチネルTTS貼付薬を処方してみて、やはり禁煙に対する薬の切れ味はチャンピックスの方がかなり勝っているなと改めて感じた。チャンピックスの場合、内服開始して、本当にまったく吸いたいと思わなくなり、すっぱり止められる人が非常に多い。

一方で、ニコチン貼付薬だけでは、ニコチン切れは抑えられるのだが、吸いたい衝動や習慣は抑えられず、このために最後の数本をなかなか止めることができない、またはかなり苦労する人が続出した。

 

そういった意味では、喫煙習慣をそれ以外の習慣に置き換えていくために、コーチング的な手法を用いて、今までの減煙してきたアクション自体を承認したり、リフレーミングを促したりと、医師の行動療法的な診療の腕の見せ所満載な感じがした。

メンタルクリニックの先生方であれば、認知行動療法を行う場面なのであろうか。とにかく、ますますこういった目に見えない診療のクオリティが強く求められる時代になってきていると、この禁煙外来でも改めて感じた。

 

ただそうは言いながらも、禁煙を成功される方はかなりの高率でおられた。

その要因としては、「職場でタバコが吸える環境が無くなってきている」ことや、「家族、特にお子さんからの強い禁煙要望」「最近は喫煙者が女性受けしないこと」「10月からのタバコ代の値上げ」「会社が業務時間内禁煙を宣言した」といった、禁煙に意識が向かざるを得ない環境や因子が様々にあり、チャンピックスの喫煙満足感抑制効果が無くとも、こういった環境要因のために、喫煙者が禁煙しようとする意思が思っている以上に高いと感じられた。これも「喫煙に対する時代の変化」であると考えられる

 

チャンピックスには、眠気・意識障害の副作用があるということから、ドライバーには処方禁忌なところがある。実際に、今回の禁煙プログラムにも電車の運転士さんやトラック運転手さんも参加されていたのだが、事業所のメンバーみんなで禁煙チャレンジしていたりして、かなり禁煙されている人が多かった。職場で同時期に吸わない人が多数出てくれば、より喫煙所でのコミュニケーションも取らずに済むため、禁煙成功者が増えると思われる。

 

一方で、非常に厄介であったのが、ニコチネルTTS貼付薬は高率で皮膚のかぶれ・発赤の副作用が起きることである。シンプルな貼付薬だからやむを得ないところがあるとは思うのだが、是非今後、何かしらの改良をしていただければと思う。

 

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、より喫煙者に対する目も厳しくなってきている。

こういった企業・健保が社員に対して、無料の禁煙プログラムを提供することにより、さらに企業内に喫煙者数が減ってくれば、さらに禁煙希望者が増えてくるのではないだろうか。

こういった環境作りを行っていくためにも、今の時代のIoTを上手に活用した完全遠隔診療や、休日外来といった取り組みといったアイデアを積極的に取り入れていく工夫が求められるのではないだろうか。僕自身も、スケジュール調整なども行いながら、多くの禁煙成功者を増やしていくことに、これからも微力ながら貢献していきたいと思う。