「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)からの教訓」(これまでの検証と今後への提言;帝京大学大学院公衆衛生学研究科 編集:大修館書店2021)を読んだ。
この本は、私の10年来の知人で、帝京大学大学院公衆衛生学の助教をされている金森悟先生から贈っていただいたものだ。
正直、自分で選んでない本を読み始めるのは難しい時もあるのだが、この本は非常に興味深く、一気に読み進めることができた。
私が興味を持ったのは、公衆衛生学教室の先生方が客観的に、COVID-19を公衆衛生学的に、これまでの世の中の経緯についてしっかりと「検証」していたことにある。
しかも、日本だけでなく、世界の動向も、様々なエビデンスを踏まえながら「検証」を行っているため、非常に勉強になり、頭の整理がついた。
さらに、「保健所をめぐる諸問題」や、感染症専門医の先生方について「彼らはなぜ表に立ったのか?-専門家が直面した壁-」といった、他ではなかなか語られることのない、最前線で陣頭指揮を執っていた方々のリアルな現場の声や実状もきちんと織り交ぜながら、公衆衛生学的に「検証」と「提言」を行っていた。
そして、本文の中でも結局、コミュニケーション能力を高めることやリーダーシップ・マネジメント能力を高めていくことが必要であるとの結論を示していた。
座談会の中でも語られていたが、医学的・公衆衛生的なエビデンスがそのまま政策に反映されるとは必ずしも限らない。ただ、そういった中でも、どうしても医学的に強調せざるを得ない事柄もある。そういった時に、マネジメント能力等を常日頃から高めておく必要性が、医療者側にもあると述べている。
そういった面において、「医師の働き方改革」とも共通することが伺われる。
是非、後々ポストコロナとなった時には、第4・5波で感染者や重症患者さんが急増し、医療崩壊のような状態を呈した時のことも含めて、第2版・改訂版を制作していただいて、この新型コロナウイルス感染症の公衆衛生学的な「検証」と「提言」を、総括的に改めて行ってほしいと思う。