「地域特性がみえてくる地域診断」(地域包括支援センターの活動充実を目指して;都築千景 編著:医歯薬出版株式会社2020)を読んだ。
「地域医療構想のデータをどう活用するか」と同様、地域医療についてもっと知らなければと考えるようになり、この本も手に取った。
著者は大阪府立大学看護学研究科教授で、地域・老年看護学が専門分野とのことで、特に神戸市の地域包括支援センターの職員を対象に、地域診断の研修を経年的にされてこられ、その経緯と成果を具体的に示しながら、研究としてまとめた内容も紹介されているので、非常に具体的で分かりやすい内容となっている。
「地域診断」や「地域包括支援センター」「地域包括ケアシステム」といっても、正直、我々にはあまり馴染みが無い。しかし、これらは「高齢者を住み慣れた地域で支えていくためのシステム」で、国としては2025年を目途に地域包括ケアシステムを各々の地域で構築していくことを推進しているそうだ。
実際には、地域包括支援センターが地域診断を行おうと思った時に情報収集しなければならないデータは多岐に渡り、人口動態、死亡・疾病状況、医療・障碍者・介護保険事業の状況などから、労働・賃金、地域の企業・経済、はたまたボランティア組織、地域のサークル・NPO団体から住民の暮らしぶり・文化といった質的なデータまで、地域を観察し、必要に応じてインタビュー調査を行い、そういった全ての情報・データを揃えた上で、分析し、地域の強みを活かしたプランニングを立てていく。
そして、保健師が中心となり、社会福祉士やケアマネジャー、地域の住民も巻き込んで、「地域診断研修」を開催し、その中でグループワークを行い、そこから出てきた様々な意見やアイデアを基に、年次の事業計画を立てていくとのこと。
将来的には、こういった地域をしっかりと理解したスタッフと、地域医療を行っている医療者・介護施設等が、常日頃からコミュニケーションを取って、前向きな連携を図りながら、高齢者を含めた地域の住民の方々がずっと生き生きと暮らせるまちづくりへと発展する地域が、日本中の随所で見られるようになっていければなと思わずにはおれない。