「病院経営の教科書 第2版」(大石佳能子 監修:日本医事新報社2021)を読んだ。
僕自身、「医師の働き方改革」のお仕事をさせていただいているので、できる限りこれに関連した書籍も読むようにしている。
今回もそういった中で、書店で購入したのだが、大変勉強になった。
まずは、日本の医療に関しての統計などの解説がされている。病院長向けに、これほど分かりやすく具体的に書かれている本はないのではないだろうか。
医療機関を経営する上で
2015年に初版が出て、今年第3版となった。2009年ごろから、妊娠糖尿病の血糖管理の重要性が叫ばれ、この本が出版され、非常に便利になった。
話題となり、関連の医療者の方達にとって、この本は非常に馴染みの深いものである。しかも、長年コンスタントに2年毎に出版されている。
糖尿病治療薬の増加等もあり、以前に比べるとページ数も増えてはきているが、それでも、診断基準から薬物療法についてまで、糖尿病診療に最低限必要な項目が非常にコンパクトで分かりやすくまとめられている。価格も税込み990円と、誠に良心的な値段である。
最近の特徴としては、他のガイドラインなどときちんとリンクしてくれていることだ。例えば「高齢者糖尿病ガイド2021」「高血圧治療ガイドライン2019」等より引用ということまで明示してくれているので、大変参考になる。こうやって引用元が明確になることで、高齢者糖尿病患者の治療や他疾患との合併治療を行う際などに、どのようなポイントに注目すべきなのかといった考え方まで示してもらえていると感じる。
そして、最近のトッピクスをコラムといった形式で、日本におけるアドボカシー活動についてや、災害時に糖尿病患者を支援する糖尿病医療支援チーム(DiaMAT)の設立の動きなども紹介してくれている。
さらに薬物療法についても、各種薬剤の特徴だけでなく、商品名もすべて記載されており、合剤についても網羅されている。最近は糖尿病薬も非常に種類が増えたため、このように一括して記載されている本を1冊持っておくことは非常に有用だと思う。そして、この執筆・編集活動にあったては、多くの日本糖尿病学会の先生方がご尽力されていることを、是非多くの方々に知ってほしい。そして、医療機関のみならず、健診機関や保険組合、職域の産業医や保健師さん達の中でも、是非、職場に1冊置いていただいて、みんなでこのガイドを基に、糖尿病や生活習慣病についての保健指導に役立てていければと思う。