「リーダーシップの理論」を読んで①

「リーダーシップの理論 ―経験と勘を活かす武器を身につける―」(石川淳 著:(株)中央経済社2022)を読んだ。

 

これは、本当に数々のリーダーシップの理論が紹介されている。その趣旨として、どんな現場でも役立つ万能の理論というものは無く、このため、それぞれの現場において最も適切な理論を用いることが必要となる。そのためには、様々な理論を知っていた方がよい、と述べられている。

理論は、使い方によっては、実際に現場でリーダーシップを発揮するための武器になる。そして、職場の誰もが適切なリーダーシップを発揮すれば、職場の成果は高まる。また、特別な才能や権限が無くても、誰もが、適切なリーダーシップを発揮できるようになる。

そして、適切なリーダーシップを発揮するためには、自らの経験と勘だけに頼るのではなく、先人たちの英知の結集である理論を参考にすることが効果的である。

また、リーダーシップ研究も、既存の研究の弱点を克服する形で進化してきている。このため、研究の流れを理解することが、各理論が大事にしている視点や意義、限界を理解することに役立ち、理論の本質を理解しやすい。

 

そこで、本文では、「経験や勘の多くは、それまでの成功体験に基づいている。しかしながら、技術進歩の加速化や顧客ニーズの多様化、競争環境激化が激しく、確実性が高まると、過去の成功体験が今日の課題解決に活かすことができない。しかし残念ながら、今日、リーダー的な立場にある人ほど、経験と勘で過去に成功を収めた人が多い。このため、容易にやり方をえることができない。とは言え、経験と勘には重要な示唆が含まれている。これらの経験と勘を適切に使うために最も重要な役割を果たすのが理論である」と解説している。

 

また、持論と理論の違いにも触れられている。持論は、本人にしか当てはまらないことが 多いため、現場で応用しやすい反面、時と場所によって使えないことも多い。このため、状況に依存している。このため、コロナ禍を経て、時代が大きく変化している昨今では、持論が通用しない場面に出くわすことが頻発している。したがって、持論をバージョンアップさせる必要が出てきている。これが難しい。やはり、変えることに抵抗感を感じる人も多く、また、実際にどうすればよいのかよく分からない。そうして、時代のせいにして、諦めてしまう人もいるかもしれない。

 

これを乗り越えて、持論を適切にバージョンアップさせるためには、自らの持論を明示化し、整理し、補足を行い、新しい環境に合わせる必要がる。この時に、理論は持論を整理するのに役に立ち、持論の足りないところを補足することもできる。理論を知ることで、持論から抜け落ちている概念を知り、持論に付け足していったりすることが可能となる。

そして、理論も実際には時代とともにどんどん進化していっているため、こうした新しい理論を取り入れながら、自らの経験も活かした持論をバージョンアップさせていく。これを筆者は持論2.0と設定している。この持論2.0には、豊かな持論構築に繋がり、有効性と汎用性が高い持論となり、今の時代に即した内容として、様々な現場で用いられることになっていく。確かに、自分でも「持論2.0」のような根拠に基づいた持論が展開できれば、どんなに素晴らしいだろうなと思う。

 

この本ではさらに、実際にこれまでに提唱されてきた古いものから最新のものまで様々な理論について紹介されている。次回は、それらのいくつかを紹介したいと思う。