日本では、COVID-19関連ハラスメントが問題になっているが、これは医療関係者達にかなり精神的なダメージを負わせてしまったのではないだろうか。これは、一般人が思っている以上に由々しき問題になるかもしれない。
実際に、日本呼吸器学会が行ったアンケート調査では、「COVID-19 に関連してスタッフや患者が何らかのハラスメントを受けた、と回答した施設は28.7%(62 施設)に及んだ」との結果が出ている。
これによって退職を考えたり、病院勤務を断念したりする医療者がいたとすれば、日本やその地域としての損害は大きいといえる。是非とも、日本社会全体で、コロナウイルス感染症の最先端で働いてくれている医療者を全面的にバックアップしていきたい。
そして、このアンケート調査によると「COVID 19 確定症例を診療している(していた)施設は 全体の 65.7%(142施設)であり、そのうち、 3 /4 以上の症例で呼吸器内科が主科となり診療している、と回答した施設は 41.5 %(59施設)であり、多くの施設で呼吸器内科が中心的役割を果たしていることが示された。また、呼吸器内科が診療にあたっているCOVID-19 の重症度は幅広く、35.2%(50 施設)では、重症例の管理に関わっていた」とのこと。
本当に呼吸器内科の先生方のご尽力には頭が下がる。
実は、呼吸器専門医の数は意外と少なく、日本の中でも非常に貴重な存在なのである。今回、ちょっと気になって調べてみたところ、日本呼吸器学会のホームページによると、日本呼吸器学会認定専門医の先生の数は6869人。ちなみに、日本糖尿病学会認定専門医の先生の数は6175人、日本循環器学会認定専門医の先生の数は14,529名(2018年4月1日現在)であった(下記URL参照)。
すなわち、心臓と肺といった、人間の中で最も大切な臓器なのにもかかわらず、実は専門医の数は倍程異なっている。しかも、糖尿病専門医とあまり人数が変わらない。それくらい呼吸器専門医は余人に代えがたい存在なのである。
https://www.jrs.or.jp/modules/senmoni/
https://www.j-circ.or.jp/senmoni_kensaku/
こんなに貴重な呼吸器専門医が、この「COVID-19関連ハラスメント」を機に病院から退職でもしてしまったら、本当に大事である。
この他にも、感染症専門の先生や総合診療科の先生も、実際に最前線で治療にあたってくれていると思うが、これらのスペシャリストはさらに人数は少なく、こちらもかなり貴重な存在なのである。
こういう観点についても、是非マスコミ等で紹介していただき、これまで日本の中で冷遇されてきた感染症関連の専門医の先生方が、今まさに活躍してくれているからこそ、我々の生活が何とか続けられていることを多くの方に知っていただきたい。
そして、こういった不人気であった診療科に、多くの若い医師が入局して、これからの日本を支えていってもらえたらとも思う。