CSII、CGM、SAP、FGMと書いて、ピンと来る人と、来ない人と二極化してしまうのではないかと思う。
それぞれ、CSII(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion:インスリンポンプ療法)、CGM(continuous glucose monitoring:持続グルコースモニタリング)、SAP(sensor augmented pump:パーソナルCGM機能を搭載したインスリンポンプ療法)、FGM(flush glucose monitoring:皮下の間質グルコース値を持続的に14日間測定できるセンサーを上腕に留置し、ICカードのように、センサーにリーダーをかざすことでその値を確認できる医療機器)の略で、いずれもインスリン治療・血糖測定に関する用語である。
なかなか知らない方々には、とっつきづらいと思うが、はやりこれらの機器が発達・改良されていくことで、1型糖尿病患者さんの血糖管理やQOLは徐々に改善されてきていると言えるのではないだろうか。
先日、これらの機器を早くから積極的に取り入れながら1型糖尿病患者さんの診療を数多く診ておられる、浜松医科大学第二内科 内分泌代謝科助教の釣谷大輔先生のご講演を聴かせていただいた。
同じ糖尿病でも、1型糖尿病は罹患歴の長い患者ほど非常に血糖コントロールが難しくなってくる方が多い。それは、基本的には罹患歴が長ければ長いほどインスリンを作っている膵β細胞の細胞数が少なくなってしまっていくからと考えられる。
普段我々は全く意識していないが、この膵β細胞から分泌されるインスリンは、極めて絶妙に分泌が調整されており、常に血糖値が100mg/dl前後で維持されるように保たれている。
これが1型糖尿病患者さんの場合、自らインスリン投与量を考えながら皮下注射していく必要がある。この調節は非常に難しく、もちろんその日の食事内容や運動量によっても大きく影響される。
このため、常に血糖値がいくつになっているか、なるべく情報量が多い方が、インスリン量もそれに応じて調整できる。ただ、そのためには頻回に針を刺して血糖測定をしなくてはならない。これはやはり、かなりストレスフルな作業となる。CGMは皮下に専用の細い管を持続的に入れておくため、皮下組織液のグルコース濃度を5分おきに計測できる。
そしてCSIIは、皮下にインスリン持続注入用の細い管を挿入し、継続してインスリンを皮下注入することができる。これにより、1日4回注射よりもさらに細やかにインスリン投与量が調整できる。これら2つの機器が合わさったのがSAPで、次第にこの分野の機器も高度化してきている。
実際に、これらがどの程度1型糖尿病患者さん達に有効かについて、釣谷先生は長年臨床研究を行われてきた。これは、釣谷先生の外来では、1型糖尿病患者さん達を手厚くフォローをされており、そのおかげでかなりの割合の1型糖尿病患者さん達がこれらのSAPやFGMといった機器を使いこなし、自ら血糖(皮下間質グルコース)値を頻回に確認しながら、インスリン投与量を調節し、より安定した血糖管理を行われている。我々も以前からこれらのデータを参考に、1型糖尿病患者さんへの外来指導などで活用させていただいている。
また、今回は静岡県立総合病院副院長の先生もお越しいただき、静岡県内の中・西・東部地区の主要な糖尿病専門医の先生方が多数集まった。
このように、専門医同志の横の連携が保たれていることは、患者さんにとっても非常に安心な環境といえるのではないだろうか。
私自身も、1型糖尿病の方の血糖コントロールの難しさに応じて、これらの機器を紹介して、できる限り生活の質(QOL)が低下しないようにサポートしていければと思っている。