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今回の文天ゼミは、「がんの早期発見と治療の新展開」と言うタイトルとともに、「血液1滴で13種がん検出・リキッドバイオプシー」というサブタイトルのセミナーであった。

最近流行りの血液診断のビジネス系の話しかと思っていたが、実際の内容はどっぷり基礎医学であった。

初めて知る内容ばかりであったため、かなり気合を入れて聴いていた。

お話しいただいたのは、東京医科大学 医学総合研究所 分子細胞治療研究部門 教授の落谷孝広先生だった。

 

血液1滴でがんを診断と言われると、だいぶいかがわしい商売かと思えるが、これを可能にしているのは、様々ながん細胞は各々、exosome (細胞外小胞)内にタンパク質やmicroRNA、mRNAなどの機能分子を積み込み、近傍や遠隔地にいる細胞へとメッセージを送っているとのこと。このメカニズムについては、国立がん研究センターのHP上でも紹介されている。

https://www.ncc.go.jp/jp/ri/division/molecular_and_cellular_medicine/ochiya/project/010/20170908133652.html

 

そして、このmicroRNAは、各がん細胞によって異なることが分かってきており、これにより採血にて、様々ながんの早期発見が可能になってきたとのこと。しかも、その感度・特異度は極めて高いことが分かってきた。

 

乳がんの脳転移には、microRNA-181c が関連(Tominaga et al.; Nat Commun 2015 Apr 1;6:6716)しているとか、卵巣がんが腹膜播種していくメカニズム(Yokoi Nat Commun. 2017 Mar 6;8:14470.)など、素晴らしい論文をインパクトファクターの高い雑誌に数多く載せておられた。

 

今後、「対外診断薬」として、市場に出てくることになると考えられるが、これを「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されているとのこと。これは、厚生労働省の働きかけにより、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)での審査期間の短縮を図り、一定の要件を満たす画期的な新薬などに、この指定を受けさせるようにしているそうだ。

 

今後、健康診断や人間ドックの検査項目の中に入ってくると思われる。ただ、どの様にすれば上手く組み入れていけることができるか、我々職域医療職も含めて、知恵を出し合い、上手に産学連携を取っていく必要があると考えられる。

これが実際に多くの人で利用できるようになると、がん領域の診断や治療がドラマティックに変革していくことになるかもしれない。期待したいものである。