今回、「医療機関の働き方改革懇談会」を東京・日本橋で開催させていただいた。
鳥飼総合法律事務所の小島健一弁護士と、hrms-jp 医療人事労務マネジメント研究会代表の河北隆社会保険労務士と一緒にセミナーを行うことができた。
4年半後には、いよいよ医療機関においても働き方改革が行われていくことになると思われるが、この会はその先駆けになるセミナーであると考えている。しかも、医師と弁護士・社労士とが連携していくことが、今後大変重要なポイントになってくることを象徴している会として開催できたことも非常によかったと考えられる。
小島先生からは「医療機関の「健康経営」への戦略的な取り組み」というタイトルで、ご講演をいただいた。以前からもお話しされておられるのだが、これからの「新しい企業(医療機関)支援のかたち」としては、紛争処理型から紛争予防型へ。つまり、“戦わずして勝つ”=先手必勝の人事・労務対応が求められると仰っていた。そして、医療機関の働き方改革においても、「「健康経営」と「ダイバーシティ経営」なくして、「働き方改革」は行っていけない」とも強調されていた。その理由としては、具体的な「健康経営」対策として、ポジティブ・メンタルヘルス、ワークエンゲージメント、キャリア開発といった組織内を「安心」かつ「活力」ある状態にしていくように、経営者が経営戦略として産業保健を積極的に取り入れ、「職員の健康を経営の基盤(財産)として位置付け」ていくことが大切だとされていた。そして、人材難が著しい今の時代は、女性・外国人・障碍者・高齢者といった多様な人達を上手に活用し、この多様性を活かしきってこそ、大きな成果・新しい価値を生み出していけるということも強調されておられた。本当に、その通りだと思う。そして、やはりこれまでに長年、企業内弁護士しとして、第一線で様々な経験を積んでおられるからこその、実感がこもった内容であったなと強く感じた。
また、河北先生からは、「病院の働き方改革」=「医師の働き過ぎ改革」、「病院の働き方改革」=「看護師の休み方改革」という重要なポイントをお話しされていた。そして、自分達の病院を退職していったスタッフが、どういった理由で辞めていったかをしっかりと検証していく必要性があると仰っていた。加えて、どの経験年数のスタッフ層が辞めていっているかで、自分達の病院運営の課題が明確に浮き彫りされることも、実際に旭中央病院での実体験を基にお話しされていたことは、非常に説得力があった。その調査結果から分かってきたことは、「「休みが取れない不満」が「看護師の退職」に結びつく」や、「「休みがとりやすい」ことが「働きやすい職場」の条件」であることを、きちんとしたリサーチ上からサマライズされてもおられた。
「医療機関の働き方改革」は、まだ後4年ほど先ではあるが、すでに危機感を持って熱心に話しを聴かれていた医療機関関係者の方も多く参加されていた。こういった方々と、今後ますます意見交換をしていくことが大切だと感じた。そして、日本中の多くの医療機関で「真の医療機関の働き方改革」が行われ、優秀な医師・看護師・医療スタッフ達が過度に疲弊することなく、病院でこれからも長く充実して働き続けられるように、これら多くの医療スタッフの方々と一緒に、「医療機関の働き方改革」について少しずつでもサポートしていけたらと切に思う。