「地域医療構想のデータをどう活用するか」(松田晋哉:医学書院2020)を読んだ。
「医師の働き方改革」の講演会をさせていただく機会が増えてくるにつれて、地域医療連携の重要性が改めて分かってきたところがある。
このため最近は、地域医療についてもっと知らなければと考えるようになり、いくつか本を手に取るようになった。
そういった中で、この本を読み始めたのだが、ただ単に「地域医療構想の考え方」を述べているだけではなく、日本中における「地域の先進事例」について、実際に取材をされ、各々の事例から学べることを、筆者が総括されている。それが大変分かりやすく、かつ勉強になる。
そういった意味で、「医師の働き方改革」を推し進めたいと考えている医療経営者の先生方にとって。この本は必読の書ではないだろうか。
加えて、日本の医療におけるこれまでの医療制度の経緯から、将来的な医療・福祉のあり方までを、エビデンスをきちんと示しながら丁寧に説明した上で、各地域でどのように医療体制を整えていく、もしくは方向転換をしていく必要があるのか、地域診断を行った事例も提示しながら解説している。
さらに、福岡県内の実例を提示しながら、地域診断の客観的なデータや病床機能報告データ等に基づいて、必要であれば、病床の縮小や、急性期から回復期+慢性期といったケアミックス型の病床へ転換していくことが大切であることが具体的に述べられている。
また、こういった未来を見据えた取り組みを行っていく際に、地域住民を含めた幅広い関係者に対する丁寧な説明といったコミュニケーションの重要性も訴えておられる。
松田先生はじめ、産業医科大学公衆衛生学の先生方とは、2年前の日本産業衛生学会のポスター会場で隣り合わせになり、お互い特定保健指導関連の内容を発表していた。その時に少し直接お話しさせていただいたのだが、確かに「地域医療に関わっている先生方にインタビューもしているんです」と仰っていた。それがこの本に書かれていた内容であったのだと、読んでいる途中に思い出した。
コロナが終息していけば、「医師の働き方改革」についても、「特定保健指導のデータ分析」についても、是非可能であれば、色々と直接お会いしてディスカッションさせていただければなと思ってしまう。