「嫌われる勇気」を読んで

すでに読んだ方も多いと思われるが、2013年12月に初版された「嫌われる勇気」(岸見一郎、古賀史健;ダイヤモンド社)を読んでみた。

 

いつもの如く、本の内容もろくに確認しないまま読み始めたのだが、アドラー心理学の教えを基に書かれた本だとは全く知らなかったので、驚いた。

今、このブログを書いている時にサブタイトルに初めて気が付いたのだが、「自己啓発の源流「アドラー」の教え」と書いてあるではないか…。

 

発刊後この本は、何年経っても人気が衰えず売れ続けていると聞いていたので、やっと重い腰を上げて読み始めてみた。その売れ続けているというイメージから、何となくアメリカの例えばハーバード大学の著名な教授が書かれた啓発本系なのかなと思っていた。ちょっと、日本人2名で書かれた心理学を基にした本というイメージは持っていなかった…。

 

アドラーの心理学は、僕も最近になって何冊か読んでいたところだったので、非常に内容が頭に入りやすかった。といっても、お恥ずかしい話しで、まず最初に読んだのは「マンガでやさしく分かる「アドラー心理学」」(岩井 俊憲;日本能率協会マネジメントセンター、2014年7月初版)であった。マンガで分かりやすく解説してもらえることは、アドラー心理学について全く予備知識がなかったので、初心者には打ってつけだったと思う。ただ、やはり詳細な内容は分からないことが少なからずあったので、漫画だけではなくきちんと文章で読む必要があるなと感じていた。そういったタイミングで、今回の「嫌われる勇気」だったので、本当に勉強になった。

 

僕自身も、20歳頃にフロイトの心理学の本を何となく読んだりしていたので、「嫌われる勇気」を読み進めていく中で、従来の心理学とアドラーの心理学とのギャップに戸惑うことがあった。そこを、二人の対談形式で本当に絶妙な会話の中で、分かりやすく解決していってくれる内容の本であった。

 

そして、医療者としては「他者への貢献」といった内容は、非常に受け入れやすいのではないかと感じた。そして、最近ではSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に象徴される、これから先進国が率先して取り組むユニバーサル(普遍的)な国際目標があり、全ての企業が積極的に取り組んでいくべき目標としても認知されてきている。そういった観点からも、アドラーの心理学はこれからの現代社会に非常にマッチした考え方なのかもしれない。そして、だからこそ多くの人達が関心を持ち、この本を読んでいるのかもしれない。

 

「過去はどうであれ、「今、ここ」に強烈なスポットライトを当てて、今できることを真剣にかつ丁寧にやっていくことが必要である」という考え方は、今まで凡人で人でなしであったとしても、今から頑張ればよいのだという、「生きる意味」を与えてくれることになるのではないか。

僕自身も、過去を振り返れば、失敗だらけの情けない思い出も数多くある。しかし、アドラーの心理学では、世界とは「自分」によってしか変わりえないとの考え方らしい。そうであるとするならば、今からでも遅くない。年齢などを言い訳にせず、まずは今日から、新たな一歩を踏み出していく。そうやって、これからも毎日挑戦しつづけることが必要なのだなと感じる。