今月の日本経済新聞(2023年8月8日夕刊)に意外な記事が載っていた。
バス運転手同士の業務中の挨拶禁止というものだ。しかも、10年以上前からこういったルールがあったらしい。僕は、こういった規制がされていることは全く知らなかった。
僕自身、京都出身なので、バスは非常に身近な乗り物であった。幼稚園児のころなどは、よく運転手席の運賃箱の横に陣取って、バスの運転を見るのが好きだった。場合によっては、すれ違うバス同士で運転手さん同士が挨拶するのを、僕も一緒にしていたことが思い出される。
この記事で、事業用自動車事故調査委員会のコメントをされていたのが、同委員長で大原記念労働科学研究所の酒井一博主管研究員だった。実は酒井先生は、医療勤務環境改善マネジメントシステム研究会の会長もされており、普段から来年度から始まる「医師の働き方改革」についての厚労省への提言などを含め、コロナ前から長年に渡り、サポート支援をされている。私もこの研究会に入れさせていただいており、最近はずっとオンラインではあるが、月例ミーティング等でご一緒させていただいている。
折角なので、記事を読みましたよと伝えるため、早速メールをしたところ、すぐにお返事をいただいた。
すると、「ドラレコで確認すると、対向車の同僚運転手へ目を向けていた時間は2秒強ですが、目を向け始めた時には写っていなかった自転車が、目を正面に戻した時には直前に迫っており、もう急ブレーキ、急ハンドルでは、事故を回避できない状況でした。バスは乗客を乗せていて、急ブレーキ、急ハンドルは、車内事故の原因になるので、バスの運転者は普通、急ブレーキ、急ハンドル操作をしません。そのために、同型のバスで、急ブレーキによる制動距離も実験してみましたが、自転車を発見した時の距離からでは、急ブレーキを踏んでも事故は回避できませんでした。結局、脇見につながる「あいさつ禁止」を事故調委員全員の賛成で決めました。」と、非常にご丁寧なコメントまでいただいた。
僕ももちろん時々バスを利用することはあるが、むしろ業務中に同じ会社のバス同士がすれ違う時に、挨拶をしない運転手がいると、何て無愛想な運転手なんだと思ったことを思い出した。
ということは、わき目を振らずにしっかり前を向いて運転している運転手の方が、きちんとルールを守って安全運転をしていたということか…。我々自身も、挨拶しない運転手は、無愛想なのではなくて、我々の安全を守ってくれているという意識を持つ必要があると感じた。本当に日々感謝である。