禁煙対策で有名な中村正和先生(公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター センター長)の講演を1年ぶりに聴かせていただいた。
昨年、実は私は「週末に小学校の校庭を借りて、学童野球などの練習や試合が行われているが、その監督やコーチが、校庭内でしかも小学生の目の前でタバコを吸ったりしていることが珍しくない。学校内での敷地内禁煙はどうなっているのか」と質問させていただいていた。その時に中村先生は「来年になれば法改正があり、原則敷地内禁煙となる。そして、東京都は全面禁煙の条例が出される」と仰っていた。
そして、この9月からいよいよ東京都内では全面禁煙となっていく。
今回のお話しを伺っていても感じたことであるのだが、日本禁煙学会は、法改正などへの地道な活動を本当にしっかりされてきた学会と言えるのではないだろうか。
法改正以外でも、禁煙外来の遠隔診療が可能となったり、全国の禁煙外来実施医療機関を禁煙学会のホームページ内で検索できたりと、「痒い所に手が届く」活動をきちんと行ってきておられる。
そして、禁煙についての医学的エビデンスについても数多く紹介いただいた。
禁煙すると体重が増えてしまう人を少なからず目にすることがあるが、糖尿病患者でもこの体重増加を嫌がる患者さんは多い。イギリスの臨床研究においても、確かに2型糖尿病患者でも禁煙後にHbA1c値が上昇することが報告されている。しかし、3年後には禁煙者と同レベルまでHbA1c値は改善するとのこと(Lycett D et al. Lancet Diabetes & Endcrinology; 2015(3)423-30)。一方で、禁煙後体重増加しても、糖尿病患者は約半分にまで心血管リスクが抑制できるということもFramingham offspring studyのデータから明らかとされている(Clair C, et al: JAMA 309(10)1014-21,2013)とのこと。
こういった数々のエビデンスを、医療者が患者さんに分かりやすく伝えることにより、より安心して禁煙に望めることになると思う。
また、遠隔診療での禁煙外来の成功率が高いことも、ご紹介されていた。私が顧問医をさせていただいているリンケージ社も禁煙成功率は9割台と極めて高い数字である。今後、遠隔診療はより盛んに取り入れられることになりそうだ。
さらに、懇親会でも直接お話しをさせていただいたのだが、中村先生自身、60歳を過ぎて今まで以上にテニスをする時間を増やされたとのこと。その言葉通り、体型も全く無駄な脂肪がなく、非常に若々しく、本当に素晴らしいなと感心した。やはり何歳になっても、活動的な方々は日頃の自己管理もご自身で本当にしっかりされているのだと改めて感じた。自分も、何とかきちんと自己管理していける様に頑張っていきたい。そして、オリンピックに向けて、さらに禁煙成功者を増やし、子供達も安心して暮らせる世の中にできるように、微力ながらもお手伝いしていきたいと思う。