今週、国立がん研究センター予防研究部部長である井上真奈美先生のご講演を初めて聴かせていただいた。この機関は、世界的にJPHC研究で有名であるだけでなく、科学的根拠に基づくがん検診マネジメントやガイドラインなどをホームページで一般向けに公表されたりもしている。
https://www.ncc.go.jp/jp/cpub/index.html
https://ganjoho.jp/public/index.html
今回は、「アルコールとガン」関連についてのテーマであったのだが、大変勉強になった。
井上先生のお話しによると、
そもそも癌という疾患は、本来欧米に多い疾患であったとのこと。それが、年々日本でも増加していき、1981年以降はずっと日本人の死因の第1位となっている。
そして2016年以降、日本でがんと診断されたすべての人のデータを、国で1つにまとめて集計・分析・管理する「全国がん登録」制度が始まり、より正確な情報が得られるようになり、さらに詳細に解析をされている。その解析結果を基に、基本的なコンセプトも、「がん研究」から「がん予防」に軸足もスライドさせておられるとのこと。
日本人での癌に関する臨床的なエビデンスも多数ご紹介いただいたのだが、非常に印象的だった論文があったのだが、それは以下の様な内容であった。
少量~中等量のお酒を飲むグループでは、男女の全死亡リスク及びがん、心疾患、脳血管疾患による死亡リスクが減少していた。しかし一方で、多量飲酒グループでは死亡リスクが統計学的有意に上昇していた (J Epidemiol. 2018; 28(3): 140–148)。しかも、詳細を見ていると、毎日アルコールを飲まない様な機会飲酒の人達の群が、がんや脳卒中などのリスクが最も低かった。
これはつまり、休肝日と死亡リスク低下は有意に関連していたという結果であった。また、適量については、今まで言われていた通り、お酒は日本酒換算で一日1合(ビールなら大びん1本、ワインならグラス2杯)程度までに控えておいた方がよいとのことだった。
今の時代でも、飲み会の時にソフトドリンクを注文しづらい空気が、まだまだあるかもしれない。しかし、この日本人のエビデンスを見ると、僕自身はお酒が強くないので、あまり周りに気を遣い過ぎず、見栄を張らずに、早めにウーロン茶などを頼むようにした方が「自分の身のため」であるのだなと改めて感じた。
今日から、外で飲む時も飲み過ぎないように気をつけようと思う。